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Emeraldの中野陽介が語る「他者との共存」 PaperBagLunchboxの解散も振り返る

2024.8.21

#MUSIC

人と人はどうしてもぶつかり合う。攻撃し合うのをやめるには?

―「ペーパーバッグは持ち味のぶつけ合いだった」という話がありましたが、その化学反応によって、瞬間的な爆発が起きて、素晴らしい作品が生まれるときもあると思うけど、「長く続ける」という観点で見ると、それはなかなか難しいかもしれないですよね。

中野:僕はサードアルバムを出した後も辞めるつもりはなかったんですけど、「続けていきたい」という自分の想いに反して、体がもうついていかないというか、今だったら症状がつくような精神状態に追い込まれていたのも事実で。

中野:その結果倒れて、バンドの解散を経験したわけですけど、その後にEmeraldを10年以上やってみて今思うのは、あの状態で続けていくのはやっぱり不可能でしたね。でも当時は「ちくしょう、終わっちまった」みたいな、挫折の方が大きかったです。だから冷静に自分を振り返る余裕もなくて、ずっと「どうすればよかったんだろう?」って、別れた彼女のことを思い出して悔やむみたいな、そういう時間が5年ぐらいは続いてたんじゃないかな。

―つまりはEmeraldの初期はその思いを引きずっていたと。逆に、いつ頃にその思いから解き放たれましたか?

中野:“ムーンライト”ができたあたりで、新しい自分の歌のキャラクターが出来上がった感じがしたんですよね。そのときにもう振り返って後悔するのをやめようと思いました。ペーパーバッグをやってたときは物理的に胸が痛くて、歌ってるときだけはそれが癒える、みたいな感じだったんです。大きい意味で共依存的な状況に陥ってたのかもしれないなと思うんですけど、Emeraldになって、みんなが自立した中で役割分担してものを作っていくことを覚えたときに、気づけば過去の自分の精神状態とずいぶん距離ができていて、あの胸の痛みが起きてないことに気づいたんです。昔はこのサイレンみたいなのが鳴ってないと音楽が作れないと思ってたんですけど、気づけばそれが鳴ってなくても音楽を作り出せるようになっていて、それはすごくデカかったかもしれない。

―Emeraldでもバンド活動を続けていく中ではメンバー同士がぶつかり合う瞬間もあったかと思いますが、それをどう乗り越えてきましたか?

中野:もちろんぶつかり合う瞬間はあります。やっぱり人間性の部分はみんな違うので。「ここはこのフレーズにしよう」みたいなことから始まった話が、いつの間にか人間性の部分、言い方とか伝え方の部分でぶつかり始めて、言いたいことが言えなくなるみたいな場面も最初はあったと思うんですよね。でもそういう伝え方の部分で齟齬が起きたときに、ギターの磯野(好孝)はそれを冷静にコンテキストの違いとして、要は仕組みとして捉えて、今の言葉に悪気があったかなかったかを紐解いて、「悪気はないよね、じゃあ攻撃し合うのやめよう」みたいな話にしてくれるんですよ。磯野好孝が翻訳者として振舞ってくれるようになってきてから、メンバー間での衝突は最小限になった気がします。

Emerald(エメラルド)
2011年結成。ジャズ、ネオソウル、AORなどのサウンドにジャパニーズポップスの文脈が加わった新時代のシティポップミュージックを提示する日本のバンド。1stミニアルバム『On Your Mind』ではリードトラック「ムーンライト」がラジオ各局でパワープレイに選出。2021年はバンド結成10周年を記念したシングル4作連続リリース企画がスタート。9月リリースの「Sunrise Love」を始め、楽曲がラジオ各局でプレイされている。2022年1月には10周年記念ワンマンライブを渋谷WWWXにて開催し成功を収める。Pop music発BlackMusic経由Billboard/Blue Note行。

―ペーパーバッグは大学生の仲間で結成されて、社会というものを知らずにスタートしていたわけですけど、Emeraldは全員ある程度の年齢を重ねて、社会を経験したうえでのスタートだったので、その違いは大きかったでしょうね。

中野:そうだと思います。その意味ではコミュニケーションで乗り越えてきた部分が大きかったし、そこも10年かけて、成長していった感じですかね。得意な分野、不得意な分野、不得意だけどやらなきゃいけないこと、得意だけど我慢しなきゃいけないことがみんなそれぞれにあるんですよ。でも今回のアルバムに関しては、それぞれの得意分野をいかんなく発揮してやれたんじゃないかなって。

―実に7年ぶりのアルバムになりました。

中野:アルバムは7年ぶりと言いつつ、ずっとシングルは出してたんです。10周年(2021年)のときは4曲出したり、短距離走を単発的に繰り返してきたんですけど、今回は足かけ1年なんです。最初にレコーディングしたのが1年前とかで、そこからの長距離走をみんなで力を合わせて走り抜いたっていう意味で言うと、すごく達成感もあるし、みんなの成長を感じました。

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