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良作が集中。2025年上半期の注目作
―最後に、2025年上半期の注目作を教えて下さい。
長内:まず、さきほど話した『シビル・ウォー』の流れで『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』が盛り上がるといいですね。あと『聖なるイチジクの種』、『教皇選挙』。そしてなんといっても『ブルータリスト』が素晴らしかったです。あれは70ミリで撮影されているのでより大きな劇場で観られたらうれしいです。
木津:『ブルータリスト』に関連して言うと、ユダヤ系のアイデンティティを見直す作品が多く出てきている印象があります。『リアル・ペイン~心の旅~』もユダヤ系のアイデンティティにまつわるドラマです。あと『セプテンバー5』など、近いテーマの作品が同時多発的に登場しています。ハリウッドはユダヤ系のコミュニティでもあるので、パレスチナとイスラエルの問題が深刻になっている中で、どうユダヤ系のアイデンティティを内省できるかは重要な問題になっている。一方で、『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』はパレスチナ側の視点に立ったドキュメンタリーで、こうした作品を観ることもきわめて重要だと感じます。
長内:『ブルータリスト』もユダヤ系であることをただ明るくポジティブにとらえているわけではないし、『リアル・ペイン~心の旅~』も個人的な話として捉えていました。それぞれ違った視点でユダヤ系というルーツに挑んでいて興味深いですね。
あとド直球のハリウッド映画で『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』と、日本の公開はいつになるかわかりませんが『28年後…』とか。ホラー映画の『ロングレッグス』は日本での公開が遅い分だけ「いつ来るのか」という雰囲気になっていたので、注目度が高まっていますね。
木津:ショーン・ベイカー監督の『アノーラ』やグァダニーノ監督『Queer / クィア』(原題)、ボブ・ディランをティモシー・シャラメが演じた『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』など……色々と悲観的なことも言いましたが、2025年上半期には注目作がかなり多いですね。その意味で、2024年下半期ははざまの時期だったのかもしれません。
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