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現実との地続きを表したアニメ『ロボット・ドリームズ』
木津:ミニシアター規模ですが、『ロボット・ドリームズ』(パブロ・ベルヘル監督)が口コミで広がり、ヒットしたことも驚きました。一方で、日本でこれだけ広まるのは、やはりアニメ作品になるんだなと複雑な思いもあります。
長内:セリフがない、小規模のアートハウス系がこれだけヒットしたのは、アニメーションに耐性がある日本ならではかもしれません。
また背景として何度もワールド・トレード・センターが出てくるのがポイントだなと思いました。ニューヨークにかつてあった風景が借景されているところで普遍性があると思ったし、よくできた感動的な映画でした。
木津:Earth, Wind & Fireの“September”が流れることも含めて、9.11の追悼映画でもあることが最後にわかる。『ルックバック』(押山清高監督)もですが、アニメーションでもファンタジーに寄りすぎず、現実と地続きであることを表現していて、それが観客にも理解されていることがよかったです。
またパブロ・ベルヘル監督は初めてアニメを監督したらしく、アニメの手法だけでなく、昔のクラシック映画を参考にした手法を使っている。僕は「古い映画に遡る傾向」は、本作以外にも感じました。
『ゴンドラ』(ファイト・ヘルマー監督)もゴンドラがすれ違うときにドラマが生まれるという、古典的なことをやっているんです。数年前まではそうした古典的手法に対してノスタルジーが感じられて苦手意識もあったんですけど、最近はむしろ古典的なことが新しいのかもしれないと感じました。『ミッション:インポッシブル / デッドレコニング PART ONE』(クリストファー・マッカリー監督 / 2023年)もある意味スラップスティック(※)な映画で、「バスター・キートンの時代に遡っている」という意見がありましたよね。130年の歴史がある中で、映画が生まれ直そうとしているのかもしれません。
※身体を使ったコメディ。「どたばた喜劇とも言われる。