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『オッペンハイマー』から『異人たち』まで。2024年上半期のおすすめ映画を振り返る

2024.7.10

#MOVIE

ジェフ・ニコルズから奥山大史まで。下半期の注目作

ー下半期に注目の作品はありますか?

長内:まずは『ザ・バイクライダーズ』(ジェフ・ニコルズ監督)。これは木津さんも楽しみにしてらっしゃいますね。

木津:楽しみですよね!

『THE BIKERIDERS』予告編(英語版)。日本では2024年秋に公開予定

長内:早めに日本の上映が決まると思わなかったので、2024年秋に公開が決まって安心しました。ジェフ・ニコルズ監督は大好きで、現代アメリカの最重要監督の1人だと思っています。新作がなかなか撮りづらかったのか、前作『ラビング 愛という名前のふたり』(2016年)から少し間隔が空いてしまったこともあって、とても楽しみにしています。

前評判を読むと、「ジョディ・カマーの映画だ」という評価を見かけて、そこが楽しみですね。彼女は去年、ナショナルシアターライブの1人芝居『プライマ・フェイシィ』が公開されて、『第76回トニー賞』演劇主演女優賞を獲っています。何をやっても絶好調なので、ジェフ・ニコルズ映画でどう演じているか、期待しているところもあります。

―ジェフ・ニコルズは男性を撮るのがうまい印象なので、たしかに女性をどう撮ったのか楽しみですね。

長内:次に『Love Lies Bleeding』(ローズ・グラス監督)、『Civil War』(アレックス・ガーランド監督)、『Sing Sing』(グレッグ・クウェダー監督)と、A24の作品も気になります。せっかくハピネットが配給する流れができたので、あまり間を開けずに日本に入ってきてくれるとうれしいです。『Civil War』は海外で話題を呼んでいるタイミングで、こちらでも大きなスクリーンで観たかった(笑)。

『Love Lies Bleeding』予告編(英語版)
『Civil War』予告編(英語版)。日本では2024年10月4日公開予定
『Sing Sing』予告編(英語版)

長内:あと日本映画では、たまたま試写で早めに観させてもらうことができた『ぼくのお日さま』(奥山大史監督)は、すごく感激しました。予告編とはまた違った印象の大人の観客にグサっと刺さる映画だと思うので、さきほどお話にあった「パーソナルな届き方をする映画」だと思います。

『ぼくのお日さま』予告編。2024年9月13日公開予定

木津:僕はトッド・ヘインズ監督の『メイ・ディセンバー ゆれる真実』。試写ですでに拝見して、とてもおもしろかったです。女優を撮る監督トッド・ヘインズの面目躍如となる作品でした。13歳の少年と36歳の女性が性的な関係にあって、しかも獄中出産をしたという実話からインスパイアされた話なんですが、かなり入り組んだ設定になっています。ナタリー・ポートマン演ずる女優が、その女性の役を演じることになったから、取材で獄中出産をした女性(ジュリアン・ムーア)に話を聞きにいくんです。俳優も含めて、映画を作るということはそもそも倫理的に際どいところにあるという作品でもあるし、『ブラック・スワン』(ダーレン・アロノフスキー監督 / 2010年)のようにナタリー・ポートマンが芸術に狂っていくアイコンぶりを発揮する作品でもありました。

『メイ・ディセンバー ゆれる真実』予告編。2024年7月12日公開予定

木津:あとはグー・シャオガン監督の『西湖畔に生きる』。中国映画もフランス映画同様に、近年おもしろい動きがあって、新世代の作家がどんどん登場しています。グー・シャオガン監督はその中でも『春江水暖』(2021年)など、叙情的でリリカルな作品を撮っているので今作も楽しみです。

今、自分はアメリカ以外の映画が観るのによい時期だと思っています。さきほどの『恋するプリテンダー』でも少し述べましたが、アメリカ映画が少し心配な時期なので。近年、『アカデミー賞』とヨーロッパの3大映画祭の受賞作品が近づいている傾向があると思っています。それはアカデミー会員にヨーロッパやアジアの人々が増えたから、という一因もありますが、アメリカ映画の勢いが薄れているからだとも思うんです。

長内:たしかに『アカデミー賞』にノミネートはされても『落下の解剖学』や『関心領域』があれほどメインに立って注目を浴びるとは思わなかったです。その傾向は今後、強まるかもしれません。アメリカ映画好きとしては寂しい限りですが、一方で新しい潮流が生まれる前兆とも考えて、そこに期待したいです。

―下半期以降、アメリカ映画が盛り返すことができるのかなど、注目していきたいですね。本日はありがとうございました!

Podcast『長内那由多のMOVIE NOTE』

長内那由多が見た映画やドラマについて語る不定期配信のポッドキャスト番組。

Podcast『生活と映画』

木津毅が友人の逢坂文哉と映画について対話をしたり、1人で映画を紹介したりするポッドキャスト番組。

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