BiSHを経て、現在は自身が主導するバンド・PEDROとしての活動を行う、アーティストのアユニ・D。音楽を通じて自らを表現し続けてきたなかで、かつては歌詞に<みんなが僕をバカにすんだ>(BiSH“本当本気”)と書いたこともあり、「全員が敵だと思っていた」と話すアユニ・Dは、さまざまな出会いや経験を通じて、他者と手を取り合うことに希望を抱けるようになったという。
今の自分のありかたに迷いを持っている人が「自分のスタイルを持つ」ことを応援するXiaomiのプロジェクト「今こそが、わたしのスペシャル。」では、今回、そんなアユニ・DにLeicaと共同開発したカメラシステムを搭載したスマートフォンXiaomi 15T Proで、自分らしいと感じる瞬間を撮影してもらった。
自分と向き合う時間を大事にすることと、誰かと時間を共有することの喜び。アユニ・Dが撮影した写真には、暮らしのなかのさまざまな時間を噛み締めながら歩んでいる、今の心情を感じさせる瞬間が写っていた。
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PEDROのベースボーカル。全楽曲の作詞から直近の楽曲は作曲まで全てを行う。彼女が紡ぐ詞世界観や聴く人の背中をそっと支えてくれるような楽曲と魂を削るように熱を発するライブパフォーマンスに共感するファンが続出。9月10日にミニアルバム『ちっぽけな夜明け』をリリース。10月から全国ツアー『I am PEDRO TOUR』を開催。
迷いや葛藤も大事なもの。影響を受けやすい中で持っている「自分らしさ」は?
ーアユニさんが今、自分らしくあるために大事にしていることはありますか?
アユニ・D:思ったことを話す、嘘をつかない、ごまかさないということです。これまでごまかしてしまうこともあったからこそ、今は生きていくうえで意識的に取り組んでいます。
ーごまかさないというのは誰かに対してというよりも、自分に対してということだったりしますか?
アユニ・D:まさにそうですね。自分の細部を知るとか、力を見誤らないとか、そういう部分を意識しています。
ー「今こそが、わたしのスペシャル。」は、今の自分のありかたに迷いを持っている人が「自分のスタイルを持つ」ことを応援するXiaomiのプロジェクトなのですが、アユニさんの「スペシャルな瞬間」について伺いたいです。どんな場面が思い浮かびますか?
アユニ・D:仕事もプライベートも含めて、暮らし全部がスペシャルだなと日々感じます。16歳で親元を離れて上京して、服も食べるものも住む場所も、自分で選ぶようになってからそう思うようになりました。暮らしって生きていくためにやるしかないことだから、なあなあにするよりも、自分の好きなものに囲まれていたくて。こだわり人間なので、服も、食べるものも、インテリアも、身の回りにあるものすべてを、自分が心地いいものにしたいです。

ーやらざるを得ないことではあるけれど、どうせなら前向きにやっていこうというか。
アユニ・D:そうですね。もともとすごくネガティブ思考ではあるんですけど、ずっとそういう気持ちを抱いていると、どうしても苦しくなってしまう瞬間が多くて、どうにかこうにか前向きにやっていかなきゃという気持ちがずっとあります。
ー今もネガティブな気持ちにとらわれてしまうことはよくありますか?
アユニ・D:日々迷走していますね。芯がないし、影響を受けやすくて、3日後には思考が変わっているような人間なんです。生き方や音楽についても、「これでいいのかな」って、寝ても覚めても悩んでいます。ただ、日々の迷いや葛藤も、大事な心の動きだと思っていて。そういう気持ちが、音楽を続けていく情熱や、自分の暗がりの部分を明るくしていきたいという意欲に繋がっていると思うんです。
ー迷いや葛藤はない方がいいものという考え方もあると思いますが、自分にとって大事なものだと思えているんですね。
アユニ・D:そもそも悩みがないと、前に進んでいきたいという気持ちにもならないのかなと思います。私はペーペーだし、やりたいことも、やれることもきっとまだまだあるはずだと自分を過信している部分があるので、もがいていることも武器にして、いい方向に進んでいけたらという気持ちで日々歩んでいます。
でも、1人でもがき続けると苦しくなっちゃうので、そういうときに、勇気を出して身近な人に相談してみると、意外と真剣に向き合ってくれたりして。自分が手を伸ばしたときに、握り返してくれる人がいるんだと思えました。そういう経験ができたのも、悩んだり迷ったりした自分がいたからこそだと思います。

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避けていた「打ち上げ」に行くようになり、生まれたPEDRO『ちっぽけな夜明け』
ー「自分のスタイルを持つ」ことは難しくもあると思います。現在も日々悩んだり迷ったりされているということですが、新しいミニアルバム『ちっぽけな夜明け』では、自分以外の他者というものについて、お互いに与え合ったり助け合ったりできる存在として歌われていて、そうした意味でアユニさんにとってまた新たな局面を迎えた作品であるように感じました。
アユニ・D:そうですね。私は10代の頃から、あまりコミュニケーションが得意じゃなくて。人見知りだし、自分のことなんて絶対誰にもわからないと思って、一方的に他の人を突き放して歩んできた部分があるんです。
でも、年齢を重ねていろんな人と出会って、意外とほかの人たちも自分と同じような経験をたくさんしていることを知りました。「全員敵」って思い込んでいたけど、それぞれ悩みや葛藤を乗り越えていて、みんな今を一緒に戦っている仲間なんだ、と思えたんです。一つの大きな変化として、最近、打ち上げが好きになったんです。
ーそれはどうしてですか?
アユニ・D:チームで一つひとつの物事をより良いものにしようと、一生懸命に一丸となって仕事をしていくうえで、一つの仕事をみんなでやり終えたお祝いができるし、自分のことも、他の人のこともあらためて知れる時間だなと思うようになりました。
ー以前は好きではなかったんですか?
アユニ・D:コミュニケーションをできるだけ避けていたから、昔はほぼ参加したことがなかったんです。でも母親が「一緒に切磋琢磨して一つのものをつくり上げている人と絆を深めることってすごく大切な時間だよ」と教えてくれて。「自分がうまく立ち回れるかとか、何を喋ったらいいのかとか、余計なことを考えずに1回行ってみなさい」って言われたんです。
実際に行ってみたら、みんな意外と心の扉を開いて喋ってくれて、自分はここにいても腫れ物扱いされないんだと思えたし、どうやったらライブをもっと良くしていけるかとかの話し合いもできて、すごく楽しくて。人と関わることで変化した部分がたくさんあるので、『ちっぽけな夜明け』は打ち上げに参加してできた曲たち、みたいなところもあります。
ーアユニさんの根底には反骨精神があると思うのですが、「全員敵」とは感じなくなった今はいかがですか。
アユニ・D:多分DNAレベルで反骨精神が埋め込まれているような感覚で、やっぱり常に抗っていたいんですよね。運がいいことに職業がアーティストなので、それにあやかってできるだけたくさん音楽に自分を落とし込んでいて。マイナスな気持ちや反骨精神も、もしかしたら誰かの何かのきっかけになっているかもしれないことが、自分にとっての希望です。

ー反骨精神も原動力の一つなんですね。
アユニ・D:私が世間知らずだからこそだと思うんですけど、自分も世界も、もっと楽しくて面白いはずだとずっと思っていて。私が知っている世界は本当にちっぽけで、自分1人の力もすごく小さなものなので、出不精な自分もいるんですけど、一歩踏み出して外の世界を見たり、人と関わることで、こんなに面白いことがあるんだ、こんなに楽しいことがあるんだ、こんなに苦しいこともあるんだって、いろんなことを知っていく。そのたびに、まだまだいけるかも、自分にはもっと楽しいことができるかもという気持ちになります。

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アユニ・Dが写真を撮りたくなる瞬間とは。撮影した写真を紹介
ー今回、Leicaが搭載されたXiaomi 15T Proを持ち歩いて「今こそが、わたしのスペシャル。」をテーマに写真を撮っていただきました。順番にお話を伺っていきたいのですが、まず「私の一服」「歴史と憩い」というタイトルがついた写真は、どこで撮影されたのでしょうか?
アユニ・D:喫茶店で撮影しました。喫茶店がとても好きで、仕事と仕事の合間に行ったり、本屋さんで本を買って持って行ったり、デモを聴きながら作詞することもあります。出不精だけど喫茶店なら気軽に行けるし、リラックスできる場所です。マップにも都内の喫茶店の印をたくさんつけていて、大体が純喫茶ですね。店主さんや常連さんも癖のある面白い方々が多くて、日頃関わらない人たちと喋れたりもするし、その雰囲気が自分にとって新鮮で好きなんです。


ー1人で行くことが多いですか?
アユニ・D:友達と会うために行くこともあるんですけど、1人で頭を整理したり、自分を見つめ直すために行くことが多いです。プライベートな時間をおざなりにしながら、物理的にも精神的にもせわしなく、がむしゃらに走ってきてしまったからこそ、自分のことが見えなくなっていたし、そのせいで、自分のことも、他の人のことも、あまり好きになれなくなった時期があったんです。自分の気持ちを整理しないと、人に感情を伝えたいときになかなかうまく言葉にできなかったりもするので、今は暮らしや自分と向き合う時間を意識的に大事にしています。
ー今回撮影された写真の中には、記事で紹介した以外にも、食や食の場に関する写真がありましたね。
アユニ・D:10代の頃は食についてまったく気にしてなかったんですけど、体調をめちゃくちゃ崩してから、「食って大事なんだ」と思うようになりました。年齢的なものなのか、周りの人が健康の話をするようになって、影響されている部分もあると思います。
「今これを食べたいな」って気分のときにそれを食べられると幸せだし、自分を労わることにもなりますよね。自分の欲望をちゃんと優先することで、「これでちゃんと頑張れる」と自分を鼓舞することもできます。自炊は自分の好きな要素を入れてつくれるところが音楽と似ていて、それがすごく楽しいんです。

ー次が「夏祭りの帰り道」。これはどんなシチュエーションで撮ったんですか?

アユニ・D:PEDROとして香川で夏フェスに出演した帰りに、車で駅まで向かう道のりで撮った写真ですね。地元の北海道に帰るよりも、仕事で香川にたくさん行っていた時期があるし、子どもの頃に田舎のおばあちゃんの家で遊んだときのことを思い出す風景でもあります。過去に戻りたいわけではないんですけど、夏休みに、今はもう亡くなってしまった田舎のおばあちゃんに会って、本当に無邪気な気持ちで、遊んだり喋ったりしていた時間を思い出すと、心が朗らかになります。
ーライブなどでいろいろな場所に行かれていると思いますが、旅はお好きですか?
アユニ・D:めちゃくちゃ好きです。ライブで地方に行ったとき、次の日がオフだったら、自分でその土地に宿を取って1人旅したりもします。去年は初めて1人でタイにも行きました。旅先でのコミュニケーションや、歓喜も憂いも虚無感も含めて、旅でしか得られない初めての感覚や気持ちが生まれてくることが好きですね。そこで得たものがまた音楽に返ってきて、表現のアイデアが生まれたりもするので、旅は自分の血肉になります。

ーさきほどこのスタジオでも写真を撮っていただきましたが、この人形はアユニさんがつくったものなんですよね。

アユニ・D:はい、つくりました。これは自分なんです。ずっと楽曲制作をしていて、張り詰めすぎたときに、そういえば陶器をつくりたいと思って、自宅のオーブンで焼ける粘土を買っていたことを思い出して。こねこねしていたら、いつのまにか自分のことをつくってました。
ーアユニさんは絵も描かれますよね。
アユニ・D:音楽は一番に優先したいもので、趣味でも特技でもあるけど、仕事でもあるから、楽しいだけではいられない部分もあります。絵を描いたり粘土をこねたりするのは、好奇心の表れという感じです。いざ自分で絵を描いてみると、楽しさも難しさも実感して、ほかの人が生み出した作品により感銘を受けるようになりました。