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ピアノは「上手に弾くことがすべてじゃない」
─練習が嫌で辞めてしまう人ってものすごく多いと思うんですが、続けてこられた秘訣というと、やっぱり「楽しい」という経験をどれだけ積めるかということになってくるんでしょうか。
江﨑:そうですね。ただ、「上手に弾くことがすべてじゃない」という考え方も大事だと思います。音楽の仕事って、演奏だけではなく、音を録る仕事もあれば、バランスを整える仕事、最終的に仕上げる仕事、編曲や作曲もある。そう考えると、指が速く動かなくても「どっちのピアノの音がいい音か」は判断できるとか、「自分なりに好きな音を持っている」ということが、仕事につながる場合もあるんですよ。
─確かに。
江﨑:音楽教室に通っていると、どうしても目の前の課題をこなすことに精一杯になりがちですけど、もっと広い視点で見れば、努力したことがその場ですぐに報われなくても、別の形で花開くこともある。そう考えると、「ただ楽しく続けている」こと自体に、大きな価値があると思うんですよね。
僕の場合、家庭環境に加えて友達の存在も大きかったと思います。個人レッスンはあまり好きじゃなかったけど、同世代の友達と会えるグループレッスンはいつも楽しみでした。みんなでアンサンブルするのがすごく楽しくて、そこでは「音楽ってこんなに面白いんだ」と素直に思えたんです。楽器と一対一で向き合うことだけが音楽のすべてじゃない。そこに気づけると、もっと楽しく続けられるんじゃないかなという気がしますね。
─ピアノに関わる方法って、いろいろありますよね。その中で、自分に合うものがどこかに必ずあるはずだから、「スケールの練習が嫌だからピアノをやめる」というのは、ちょっともったいないなと思うんです。
江﨑:練習が嫌だと言っている人に「ちゃんと練習しなさい」って怒っても、逆効果になったり、そうやって言われることで、音楽そのものが嫌いになってしまうこともある。ピアノの演奏自体にはそこまで興味がなくても、木材の質感に魅力を感じるかもしれないし、調律の仕組みに興味を持つことだってある。ピアノって、単なる楽器ではなく、いろんな可能性を秘めているものなんです。

江﨑:だから、「なんで自分はピアノに向き合おうと思ったんだろう?」という最初のきっかけを大事にして、それを突き詰めていくのが一番いいんじゃないかと。「レッスンが嫌だった」「先生が怖かった」という理由でピアノから離れてしまう人が、少しでも減るといいなと思います。
─ちなみに江﨑さん、今すごく興味を持っていることってありますか?
江﨑:今はもう、ひたすら映画音楽と向き合うモードになっています。家で観る映像作品の数もすごく増えましたし、観るときの視点も変わりました。これまで20年間、バンドの世界だけでなく、さまざまな形で音楽に関わってきましたが、ここからは、自分がすべての制作の責任を負った状態で、映画音楽に本気で向き合っていこうと考えています。完全にそういうフェーズですね。

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