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春麗の大腿筋はガチ。『ストリートファイター/ザ・ムービー』のディテイルを観る

2026.10.26

#MOVIE

10月16日(金)に全世界同時公開された『ストリートファイター/ザ・ムービー』。監督は、悪ノリコメディ『バッド・トリップ~どっきり横断の旅~』(2021年)のキタオ・サクライ。一方、リュウを演じるのは、ドラマ『ウォリアー』(2019年~2023年)で武術の達人を演じてきたアンドリュー・小路だ。

ふざけ倒す演出と、大真面目な演者。その組み合わせは、ゲームの再現度を何より気にするファンの目にどう映るのか。黒帯のくたびれ具合から春麗の大腿筋まで、10代の頃にリュウの真似をして空手着の袖をボロボロにしていたハシマトシヒロが、本作の細部を語る。

ヴァン・ダムのガイル、清水宏次朗のリュウ。シリアスだった歴代映像化

対戦型ゲームの最高峰ともいえる『ストリートファイター』シリーズは、過去何度も映像化されている。そしてそれらの世界観は、基本的にシリアスだ。

(画像左から)ケン(ノア・センティネオ)、リュウ(アンドリュー・小路)

1994年の映画『ストリートファイター』は、曲がったことが大嫌いで、熱く硬派な軍人・ガイルが主人公。ジャン=クロード・ヴァン・ダムが演じているだけあって、ガイル得意のサマーソルトキックはゲーム同様に美しく、跳び後ろ回し蹴りのキレは芸術的ですらあった。

同年のアニメ版『ストリートファイターⅡ MOVIE』においては、定石通りリュウが主人公。無骨でストイックな、イメージ通りの姿で描かれているリュウに声を当てているのは『ビー・バップ・ハイスクール』シリーズ(1985年~1988年)のヒロシ役も務めた、清水宏次朗だ。

ヒロシといえばケンカは強いが女好きであり、そのキャラに清水宏次朗はガッツリハマっていた。だが、リュウは正反対の硬派キャラである。相方のケンが女好きに描かれやすい一方、リュウに女性の影は見当たらない。案の定、清水の声の演技はぎこちなく、お世辞にも上手だとはいえなかった。ケンの声を務めた羽賀研二は、ディズニー『アラジン』で主人公の吹替を務めたほど声の演技が達者であるため、余計にリュウの「ぎこちなさ」が際立つ。だがその不器用さが、かえってリュウというキャラのパーソナリティに合っていたともいえる。

2009年の『ストリートファイター ザ・レジェンド・オブ・チュンリー』は、タイトルが示す通り、春麗(チュンリー)を主人公としたスピンオフである。裕福な家庭で育った少女が、ベガ率いる悪の秘密結社・シャドルーに父をさらわれ、修行を経て武闘派の女性へと覚醒するまでを描く。

惜しむらくは、戦闘時の服装が黒のボディスーツであること。ゲーム版『ストリートファイターZERO』に寄せた可能性もあるが、春麗といえばやはり、チャイナドレスに素晴らしく発達した大腿筋である。『スト2』の映像化であれば、やはりファンが期待するのはキャラの再現度だ。アクションがキレていたため、その点がもったいないと感じた。

『バッド・トリップ』の監督が撮った、「わけのわからんパワー」に溢れている実写版

そして最新作、『ストリートファイター/ザ・ムービー』である。本作は、過去のどの映像化作品とも似ていない。すべての過去作を笑い飛ばすような、わけのわからんパワーに溢れている。

本作を観る際は、Lサイズのポップコーンとコーラを買い込んで観てほしい。いや、できることならビールでも飲みながら観てほしい。毎回応援上映のように、ツッコミながら観られるようにしてほしい。高尚な考察なんか、一切する必要はない。ちょこちょこ挟まれるクドいギャグに笑いながらポップコーンを食い、演者たちの本気の戦いの熱に煽られながら飲むビールは、格段に美味いはずだ。

なにしろ監督のキタオ・サクライは、コメディ畑出身である。前作はロードムービー悪ノリコメディ『バッド・トリップ~どっきり横断の旅~』という、「最低」の映画だ。ちなみにこの場合の「最低」とは、エド・ウッドの『プラン9・フロム・アウタースペース』(1959年)やジョン・ウォーターズの『ピンク・フラミンゴ』(1972年)を最低と言うようなニュアンスだ。つまり、「最低で最高」という意味だと思ってもらえればいい。この作品の主人公は、本作ではあのウザいリングアナウンサーのドン・ソバージュを演じているエリック・アンドレである。その時点である程度想像がつくと思うが、本編84分中、80分はふざけている。そしてそのうち50分は下ネタだ(体感時間)。監督も泥酔して撮ったのではないかと疑ってしまう内容で、酒でも飲みながら複数人で観るのが正しい鑑賞法だ。素面のままひとりで観てはいけない。悪い夢を見る。筆者のように。

そんなサクライ監督の撮った本作だが、もちろん演者たちは大真面目である。ガイル(コーディ・ローデス)はあのガム取りヘラみたいな髪型を忠実に再現しているし、その他のキャラも、基本的にゲーム準拠だと思ってもらっていい。

若き日の藤岡弘、のような武道家。アンドリュー・小路の『ウォリアー』とブルース・リー

中でも素晴らしいのが、主人公リュウの造形である。演じるアンドリュー・小路が、これ以上ないほどにハマっている。若き日の藤岡弘、を彷彿とさせる、無骨で融通の利かなそうな昭和の武道家然とした風貌。突きひとつ、蹴りひとつを取っても、演者自身が真面目に武道を稽古してきたであろう重みを感じさせる。この「重み」は、運動神経が良く、単に技の見た目だけを器用にこなす俳優には、決して出せないものだ。

また、強さを追求するあまり、闇落ちしそうな危うさをもまとっている。『鬼滅の刃』(2016年より連載開始)でいえば、あくまで鬼化を拒否した煉獄杏寿郎ではなく、弟を超えるために鬼化を選んだ黒死牟のような執念だ。

リュウ(アンドリュー・小路)

アンドリュー・小路のアクションは、『G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ』(2021年)においても、『ブレット・トレイン』(2022年)においても、素晴らしく冴えている。特に『ブレット・トレイン』においては真田広之の息子役を演じており、長年のアクション映画フリークとしては、涙が出るほどに感慨深いカップリングだった。

だが、彼を語る上でもっとも重要な作品は、主演を務めたドラマシリーズ『ウォリアー』だろう。同作は、西部開拓時代のサンフランシスコを舞台に中華系反社組織の世界に身を投じる武術の達人、ア・サームの生きざまを描く。そのア・サームを演じているのが、アンドリュー・小路。対立する組織の人間、あるいは差別感情をむき出しにする相手に、彼の鉄拳が炸裂するのだ。

そもそも『ウォリアー』は、1970年代にかのブルース・リーが自らの主演を前提に構想を練ったものではあるが、アンドリューはリーの演技に寄せてはいない。彼オリジナルのア・サーム流アクションを構築している。例えば、リーならば横蹴りで吹き飛ばしそうな流れで、アンドリューは旋風脚を蹴る。その素晴らしく伸びのある旋風脚が、発展技ともいえる「竜巻旋風脚」(※)に繋がったのだろう。

※竜巻旋風脚:『ストリート・ファイター』の有名な必殺技(コマンド:↓ ↙ ← + キック(K))

https://youtu.be/J0QMqpHXYeM?si=-_Ih73wHjJBmTAqI

だが、ブルース・リーへのオマージュも忘れてはいない。番外編ともいえるシーズン1第5話では、相手の頸をひねり折ったり、ハイジャンプからフットスタンプ(※)を決めたりと、リーをイメージしたアプローチを見せている。

※フットスタンプ:両足(または片足)の裏で激しく踏みつける打撃技

フットスタンプの際にきっちりスローモーションにする点も、『燃えよドラゴン』(1973年)で、リーが妹の仇・オハラを踏み殺す有名なシーンと同様である。この話だけ突然西部劇チックになるため、「もし西部劇にブルース・リーが出演したら」という想像が働き、趣深い。

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