吃音がある新人弁護士が法廷でラップをする異色のリーガルドラマ『リーガルビート -逆転の法廷-』(テレ東系)が最終回を迎える。
最初は違和感もあった主人公・泰地空(鈴鹿央士)によるラップシーンも、その誠実な歌い方と胸に響く言葉の数々がクセになり、少なからぬドラマファンの心をつかんでいった。
泰地の一番の親友・ムック(夏生大湖)が巻き込まれた事件の行く末も気になる本作について、前半を振り返った記事に続いて、毎クール必ず20本以上は視聴するドラマウォッチャー・明日菜子がレビューする。
※本記事にはドラマの内容に関する記述が含まれます。あらかじめご了承下さい。
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話題作の影に隠れた2026年夏ドラマ屈指の良作

「法律は完璧じゃない。救うべき人を救えるとも限らない。だからせめて僕たちが、真っ当に怒って真っ当に戦う。それができるのが法廷だ」
弱者救済を掲げる雪村法律事務所には、さまざまな依頼人たちがやってくる。人の数ほど理不尽なことが起きる世の中に、しばしため息をつきたくなるが、それでも『リーガルビート』を見たあとは、不思議と心地よさが残る。傷つけられた人の痛みを決して置き去りにせず、一緒に真っ当に怒ってくれる雪村法律事務所の三人が、なんとも心強いのだ。セクハラ訴訟に敗訴してから法廷に立たなくなった雪村(小雪)を奮い立たせた星(稲垣吾郎)による冒頭のセリフは、本作の根底に流れる思いを、あらためて言葉にしてくれたように思う。
そんな『リーガルビート』もいよいよクライマックスを迎える。2026年夏ドラマにおいては、日曜劇場『VIVANT』(TBS系)と『Tシャツが乾くまで』(TBS系)が話題を席巻していたが、『リーガルビート』もまた、ドラマファンの間では今期屈指の良作として評価も高く、最終回後にもさらなる広がりを見せそうな一作である。
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立場も経験も違う3人の互いへの影響

本作は、『相棒』シリーズ(テレビ朝日系)の光益義幸、映画『99.9-刑事専門弁護士-THE MOVIE』の三浦駿斗、阿部凌大の3人体制で手がける全9話のオリジナル脚本作品だ。本稿で取り上げる後半の第6話から第8話を担当した阿部は、2023年に第35回フジテレビヤングシナリオ大賞を受賞した『高額当選しちゃいました』でデビュー。その後、『晩餐ブルース』(テレ東)や『東京P.D. 警視庁広報2係』(フジテレビ系)などにも参加しており、本作を機に、その名前がさらに広く知られることになりそうだ。
吃音がある新人弁護士・泰地(鈴鹿央士)と、大手事務所から独立した星と雪村。少数精鋭の雪村法律事務所は、凸凹どころか、キャリアも年齢も性別も異なるトリオなのだが、そこには泰地が好きなラップにおける「サイファー」のような、平等で対等な精神が流れている。泰地の成長を見守り、ときには彼の背中を押すベテランの星と雪村もまた、彼から刺激を受け、長年踏み出せずにいた一歩を踏み出していく。立場も経験も違う3人が互いに影響を与え合いながら前へ進む姿も、本作の見どころの一つだ。
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「合理的配慮」をテーマにした第7話

『リーガルビート』を見ていると、「社会」とはそもそも、異なる性質や価値観を持つ他者同士で成り立っているものなのだと、あらためて実感させられる。それは、泰地にある吃音のような、特性の有無で分け隔てるものではない。育ってきた環境も、置かれた立場も、価値観も、誰ひとりとして同じ人間はおらず、誰もが誰かにとっての「他者」なのだ。
それを強く感じたのが、阿部が脚本を担当した第6話から第8話だった。アラフィフ女性派遣社員と若手男性正社員の間で起きたセクハラ問題を描いた第6話、ASD(自閉スペクトラム症)がある研究員が多額の損害賠償を請求された第7話。そして第8話からは、泰地の一番の親友であり、同じく吃音のある「ムック」こと椋井岳(夏生大湖)の物語が展開されてゆく。
なかでも、「合理的配慮」をテーマにした第7話は特に印象深かった。合理的配慮とは、政府広報オンライン(※)によると、障害のある人から「社会的なバリア(活動を制限するもの)を取り除いてほしい」という意思が示された場合、負担が過重でない範囲で、そのバリアを取り除くために必要かつ合理的な対応をすることを指す。2024年4月には改正障害者差別解消法が施行され、事業者による合理的配慮の提供は義務化されている。
※事業者による障害のある人への「合理的配慮の提供」が義務化 | 政府広報オンライン https://www.gov-online.go.jp/article/202402/entry-5611.html

泰地が道端で眺めていた「あなたの“個性”を活かしませんか?」と書かれた求人募集の張り紙を、彼の目の前でぐしゃぐしゃに丸めた琴美(唐田えりか)は、研究センターで研究員をしていた。ところが、エアコンの室温自動調整システムを入れ忘れたせいで、研究用マウスを全滅させてしまい、解雇されたうえに3,000万円もの損害賠償を請求されていたのである。琴美は事前に自身の特性を職場に伝えており、それまでは「指示や優先順位の明確化」「口頭ではなくメール等での文書化」などの合理的配慮もなされていたようだ。
やがて問題の争点は、ルーティン化を徹底する琴美が、本当にシステムの起動を忘れたのかという点に移っていく。メモを細かく残し、それまで大きなミスを起こしたこともなかった琴美に、罪をなすりつけた第三者がいるのではないか。調査を進めた泰地たちは、教育係として彼女を気にかけていた奥寺(中山雄斗)に行き着く。