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「音楽をやる」=「音楽で食べたい」と思われるのはなぜ?
tami:カフェオレ理論は私からすると、とても自然なことのように感じるんですけど、でも実際にはまだ意識として珍しい状態なわけですよね。「30歳になったら諦めなきゃいけない」とか、いまでもよく言うじゃないですか。
タカノ:固定観念があるんですかね。社会の「こうあるべき」みたいな。自分も昔言われてすごく嫌だった言葉があるんですけど、音楽やり始めたときに、同じ会社に勤めてたバイトの男の子に、「シンヤさん30歳過ぎて音楽とか始めたんすか。やばいっすよ」って言われて、うわーって思って。そういうバイアスを持った人が結構多いから、何か言われるのが怖くて踏み出せない人も多いんじゃないかな。

tami:そうかも。でも「30歳過ぎて絵を描き始めた」って言っても、誰も何も言わなくないですか? 「音楽をやる」=「音楽で食べたい」と自動で思われてる気がする。私が音楽に携わってるからそういう目線で見ちゃってるのかもしれないけど。
タカノ:そうかもしれない。「30歳で登山を始めました」って、何も言われないですよね。
tami:「30歳でゴルフを始めた」はめちゃくちゃみんなしっくりくるだろうし。
タカノ:ピアノとか楽器って、「幼い頃からずっとやってないと技術が身につかないもの」っていうバイアスが強いのかもしれない。
tami:これって海外だとどうなんですかね?
ー一般的に、海外の方が「自分を表現すること」への敷居は低い気がします。
tami:もちろん「デビューしてすぐ爆売れ」みたいなことで言えば、向こうもビリー・アイリッシュとか「若き天才」みたいなのが好きだとは思うんですけど、ある程度の年齢になってから音楽を始める人に対してちょっと馬鹿にするスタンスが、日本はあるかもしれないですね。
ーだからこそ、こうやってtamiさんやタカノさんのことを知ってもらうことで、もっと気軽に「私もGarageBandやってみようかな」と思う人が年齢問わず増えたらいいですよね。
tami:とは言いつつ、年を気にしてしまう自分もいるにはいて、「おばさんが頑張ってるな」みたいには思われたくないし(笑)。だから、「年なんて関係ない」っていう自分と、年を気にしてしまう自分とどっちもいて、でもそれがナチュラルな状態なのかなって。ただ最終的には後者が勝ってほしくない。それが勝っちゃうと、結局何も始められなくなっちゃうから。

タカノ:そうですね。だから、自分の中でも戦いはありますよね。
tami:ありますね、本当に。もしかしたら、音楽をやってる人はみんなそういう葛藤がないと思われてるのかもしれない。私にしても、タカノさんにしても。
タカノ:いやいや、周りのことめちゃめちゃ気にしてますよ。
tami:そうですよね。みんな仕事との折り合いとかに悩みながらやってるんだよってわかったら、「それなら私もやってみようかな」って、音楽人口が増えていいんじゃないですかね。
タカノ:ライバルも増えますけどね(笑)。でもつくる人が増えた方が健全だと思う。マーケットとしては。
tami:そうなんですよね。「音楽はお金にならない」ってよく言うじゃないですか。でも資本主義的に考えたら、母数増えたらお金にならざるを得ない状況になるはずで。自分と接点がないと思うと、「金になろうがなるまいが関係ない」となってどんどん状況がひどくなってしまうので、やっぱり音楽人口は増えるといいですよね。