連載『音楽と仕事、ときどき法要』
記念すべき連載第1回は、奈良を拠点に活動するバンド・LOSTAGEのフロントマンで、自主レーベル&中古レコードショップ「THROAT RECORDS」のオーナーでもある五味岳久さんを訪ねました。
「音楽をやめる、続けるとは?」というテーマから、音楽に限らず「稼ぐこと」「仕事」について、そしてメンバーを含めた「人」との関係性について対話が深まっていきました。THROAT RECORDSの店内で、たくさんのレコードに囲まれながらのふたりのおしゃべりの様子をお楽しみください。
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子供ができた時、このままじゃまずいなと思って。それでTHROAT RECORDSを立ち上げたんです。(五味)
tami:私、本格的に音楽をやり始めたのが遅くて、20代後半だったんです。その年頃って、みんなけっこう音楽をやめていく時期だと思うんですけど、私は逆にその時期に始めたんですよね。
五味:それまでは、なんでやらなかったんですか?
tami:中学と高校では軽音楽部でバンドをやってたんですけど、大学に入る時にやめちゃったんですよ。その後、大学院を出て研究員として働き始めたんですけど、仕事の理想と現実のギャップもあったし、長時間のハードワークでめちゃくちゃストレスが溜まってしまって。そんな中で、なぜか急に「音楽がやりたい!」と思って、DTMを始めました。仕事が終わった後、夜な夜なひたすら曲を作る日々でしたね
五味:最初はソロだったんですよね。その後メンバーが増えてバンドになったんですか?
tami:そうです。バンドを組んだのが遅かったから、昔からずっと一緒にやり続けている仲間とか盟友みたいな人がいなくて、TAMIWのメンバー以外で音楽をやっている人と深く話す機会があんまりなかったんですよね。それで最近、いろんな人の話を聞いてみたいと思うようになって、思い浮かんだのが「音楽と仕事」という連載テーマと、五味さんでした。
五味:ありがとうございます。
tami:五味さんは今、バンドとこのお店を並行してやられていますよね。そこに至った経緯って、どんな感じだったんですか?
五味:バンドは高校の学祭でステージに立つために始めて、当時とメンバーは変わっていますけど、そこからずっと続けてます。店を始めたのは、2012年。その前はバンドをやりながらバイトしてたんですけど、29歳で結婚して33歳の時に1人目の子供ができた時、家族を支えていくことを考えたら、このままじゃまずいなと思って。それでまず自主レーベルを立ち上げたんですよ。その事務所を探していた時にこの物件を見つけて。
tami:最初からお店をやろうと思ってたわけじゃなかったんですね。
五味:そう、たまたま。物件を探してた頃、このビルの隣で友達が店をやってて、「隣空いたで!」って教えてくれたんです。それで見に来てみたら気に入って、借りることにしたんですけど、事務所としてだけ使うにはちょっと広い。スペースが無駄になるから、ちょっと物売った方がええかなと思って、家にあったCDとか並べて売ってたんですよ。そこから徐々に店舗として形を整えていって、買い取りとかもするようになって、今の状態になりました。