「知る幸せ」と書いて「知幸」。知ることや学ぶことの幸せ・喜びを体現するSummer Eyeこと夏目知幸が訪れたのは、前回に引き続きたばこと塩の博物館です。「たばこ編」に続き、今回は「塩編」をお届けします。
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これを読めば「君は僕の塩!」というセリフが「アイラビュー」になる
ユーアー・マイ・サンシャイン! 君は僕の太陽! なんて言われた日にゃメロメロになりますけども、ユーアー・マイ・ソルト! とは誰も言わないし言われても「は?」だ。え? ソルト? 塩? 意味ワカンナイ。いやむしろ気分悪いかも、だって塩対応なんて言葉もあるしダサいことを「しょっぱい」って言ったりもするし「アタシって魅力的じゃないのね……」と凹んじゃう。近年ニッポンの夏は酷く暑いから、水と塩! 生命に必要! ってみんな知ってるのに塩の扱い、塩のカーストは低いままですね。
たばこと塩の博物館の常設展示「塩の世界」を一度覗けばそんな日常が反転するかもしれない。明日世界中の人が見学したら明後日には「君は僕の塩!」というセリフが「アイラビュー」……いやそれ以上に強い意味を持つ言葉になるだろう確信が僕にはある。さあ行こう、塩を知ろう。
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夏目少年の塩作りの思い出。意外にも少数派な日本の塩製法
塩で思い出すこと。僕の通っていた小学校では塩作りの授業があった。東京湾岸沿いにあったから地域教育の一環かな。珍しいよね。
まず校舎の屋上に校庭の砂を敷いて塩田を作る。けっこう大変。次に海岸まで行ってバケツで海水を汲み、運び、塩田に撒く。1週間に1〜2度行う。ツラい。最初のうちは遠足気分で海まで歩けたけどすぐ飽きた。1学期中繰り返すと、砂と砂の間に塩の白い結晶が現れ始める。塩田の砂を集めて海水と混ぜて濾す。濃い塩水が取れる。それを煮詰めると塩になる。
自分達で作った塩を舐めると、苦かった。とてもとても苦かった! 不純物がいっぱい入ってたんだろうな。けど味より衝撃的だったのは量。半年かけて作ったのに、ビーカーの底にこびりつく程度しか取れなかった(理科室で煮詰めた)。あの時の虚しさをまだ覚えている。
塩、取るのこんなに大変なのかよ……と思った。その日から今日まで30年、スーパーで売られている塩を見るたびに「お疲れ様です……」という気持ちが沸いていた。
が、展示の初っ端、僕が体験したような塩作りはむしろ少数派だと知る! 現在、世界で1年間に作られる塩の量は約2億8000万トンで、多くは岩塩や塩湖など内陸の塩資源から製造される。海水から作られるのは1/4から1/3! さらに、①海水を濃くして塩水をとる②それを煮詰めて結晶を取る、という2つの工程を組み合わせて塩を作ってるのはもっと少数派らしい。
技術が発展したりスケールが変わっても日本の製塩法は古代から現代までこの①をやって②をやる二段構えのやり方だという。展示ではその歴史を知ることができる。我々に「国民性」があるとしたら塩作りの面倒くささがけっこう影響してそう、と思った。面倒臭いとか言っちゃいけないのかもしれない。手間のかかり方がえぐい。
全国でただ一軒だけ人力で浜に海水を撒く塩作りが「存続」している能登半島・角花家の鉄釜や釜屋が移築復元さている展示がかなり見ものです。2013年まで実際に使われていたそうで、ホンモノのオーラ、やばいっす。
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我々は塩に囲まれて生きているし、塩に生かされている
さてそんな2億8000万トンの塩、全部人間が食べているわけではない。むしろ食用は15%以下(日本の場合)! 少ねえ。塩は塩素、か性ソーダ、ソーダ灰などに作り替えられて生活をいろんな面から支えてくれているのであーる。
例えば塩素、塩化ビニル製品とか、半導体シリコンとか、水道水の消毒に使われる。もしこれらがなかったら、大変。例えばか性ソーダなんて聞き覚えないけど、合成繊維とかアルミ製品や紙製品、石鹸製造に欠かせない物資らしい。やっぱりこれらもまた、ないと無理。
展示を見て感じるのは、生活に関わるものの中から塩が関わっていないものを探すほうが難しい。我々は塩に囲まれて生きているし塩に生かされている。君がいなくちゃ生きていけない。
ここまで読んでもらえたら、「ユーアー・マイ・ソルト!」って言ってみたくなってきたはずなんだけど。え! そんなことない? ちくしょう。塩まいちゃうぞ。
Summer Eye選曲による「塩にまつわるプレイリスト」
リリース情報
Summer Eye
『大吉』
2023年3月21日(火)リリース
- 失敗 (new mix)
- 求婚 (new mix)
- 湾岸
- 双六
- 甘橙
- 人生 (new mix)
- 水坑 (new mix)
- 白鯨
- 大吉
博物館情報
たばこと塩の博物館
住所:東京都墨田区横川1-16-3
開館時間:10:00~17:00(入館締切は16:00まで)
休館日:月曜日(月曜が祝日、振替休日の場合は直後の平日)、年末年始(2023年12月28日~2024年1月3日)
入館料:大人・大学生 100円、小・中・高校生50円