INDEX
創作を通しての交流
―ここ2人はサシで遊ぶことあるんですか。
加藤:神保町と浅草で飲んだときと、あと苫小牧か。桑島さんに苫小牧来てもらって、『FAHDAY』のメインビジュアルの撮影をやったんですよ。

桑島:2日目の途中ぐらいから加藤くんと合流して一緒に飲んだんだよね。『FAHDAY』のオファーはすげー嬉しかったんですけど、オーダーが「桑島さんが苫小牧でぶっ壊したいものを撮ってください!」っていう(笑)。撮影したのが1月で、ちょうど僕が離婚したばっかりでめちゃくちゃ落ちてたんですよ。だから内容が暗くて(笑)。
加藤:僕は兼ドライバーみたいな感じで、ただ2人で黙々と写真を撮ってったんですけど、最後の日に山道を走ってたらトンビが一箇所にたかってて、なんだろうと思ったら鹿の死体があったんですよ。氷点下だから腐ってなくて、すごい綺麗な状態で残ってて。で、桑島さんが熱心に撮ってたんですけど、これ絶対『FAHDAY』で使えないだろうなって思いながら見てた(笑)。

桑島:具体的なものは写ってるけど、なんでそれを撮ったのか分からないものって結局抽象だと思うんですよ。だから壁のシミとか、ヒビとか、これ何ですか? ってものをずっと撮ったんですよね。
―メインビジュアルのオーダーもそうだけど、加藤くんって結構コンセプチュアルですよね。イベントにしてもアートワークにしても、これはこういう意図があるからこうするみたいなのが毎回明確な気がする。
加藤:行き当たりばったりみたいなトライ&エラーがあんまり好きじゃなくて。今回はこれをやろうってときに、1から10まで説明できるロジックを立てるんですよ。音楽を作るときもそうで、これとこれを混ぜたらこうなるみたいな。「もしこの時代にこれがあったらこのリバーブは絶対デジタルじゃないからこういう質感になるはずだ」とか、「このプロジェクトにこれぐらいの予算があったらこういう音になる」とか、そういう実験の前段みたいなのを考えて、そしてやってみる。結果的に「違いました」だったりするんだけど、僕はその場合「違いました」っていう状態で出すことにしてます。最初に立てた自分の仮説を翻して、結果が通ったことにはしないようにするっていう自分ルールがあって。
桑島:アルバム作ろうと思って曲作るじゃん。そこでこぼれていく曲とかあるの?
加藤:結構ありますよ。この曲たぶん凄い良い曲になるけど今はできないな、みたいな。『dimen』なんかはそういう曲でしか構成されてなくて、新しく作った曲はあんまないんです。
加藤:カケラみたいなのはボイスメモにいっぱい入ってて、だから掛け合わせを考えるって感じですね。これを自分がやって面白くするとしたら何なんだろうなー、っていう。でも変なことやりまっせ! みたいなのは好きじゃない。実験っぽいフリージャズ的なキメを入れたりとか、ダンスっぽい解釈でやってますっていって単に4つ打ちなだけだったりとか。そうするとどんどん選択肢が減っていって、「普通に歌うとかっていま一番誰もやってなくない?」って思ったり。そういうスキマ産業的な作曲をしてますね。
