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Bar Old(ライブバー)
んで、そろそろ飯でも食おうかってんで、Bar Oldへと行った。お店へと向かう道すがら、シオン君というバンドマンの子と会った。これから札幌に行ってスタジオに入るのだという。がんばってね、といって手を振り別れた。さてBar Oldだが、DJブースや弾き語りが出来るステージもある本格的なライブバーであるいっぽう、飯もまた本格的だった。静岡風おでんとヴィーガンまぜそばをいただいたのだが、ダシ粉のかかった黒はんぺんも絶品だし、お好みで原酢をかけて食べるまぜそばはやや固めの麺とカボチャと春菊の食感が絡むアンサンブルがすばらしかった。舌鼓をブラストビートで打ちながらまたたく間に完食してしまう。


ピースフルであたたかな空気がただよう店内にはオザケンがかかっていて、それがまた多幸感を加速させていた。オーナーのクロゴメさんはかなりノリのいい人で、奄美大島の黒糖焼酎やウォッカを出してくれたりして、僕らはそれをがんがんやりながら「いや〜(笑)」とか言ってあれこれ話した。

「こないだ友達が、『総理大臣は日本でいちばん友達が多いヤツがやればいい』って言ってて、それ結構アリかもなって思ったんだよね。『友達多いヤツが偉い』みたいな価値観でいきたいワケじゃないんだけどさ」
「でもまぁ、政治家はパーティオーガナイザーの資質は必要っすよね」
そんなふうに政治とか音楽とか友達のことについて、とっちらかった居酒屋放談をあてどもなく続けた。加藤君はNOT WONKでZAZEN BOYSと対バンしたときの話をしてくれた。
「ライブ終わった後に楽屋に挨拶に行ったら、向井秀徳さんが『俺が今までレコードで聴いてきたレスポールの音がする』ってひとこと言ってくれたんですよ。それ以上でも以下でもなく。最高の褒め言葉だと思いました」
この時点で僕はもうしこたま酒をきこしめしており、前日も午前2時まで飲んでいたという加藤君は僕の倍は飲酒していたが、さらに移動して、もうひとつ居酒屋へと向かった。しかし何ということだろうか、この日はたまったま、珍しく休みだったようで、僕らはCLOSEDしているトビラの前で地団駄を踏んだ。ちくしょー。この日会った人たちはみんな口を揃えて「あそこは最高」「飯がマジで美味い」と言っていただけに、このタイミングで行けなかったことが悔やまれる。

悔しまぎれに僕たちはメインストリートから一本ずれたところにある、プレハブ小屋が立ち並んだ横丁へ行き、一軒のくしかつ屋へと入った。無愛想というよりは放任主義的な感じのする老店主が揚げるくしかつは美味しかった。ビール(ハイボールだったかも)を飲みながら、僕らは音楽の話をした。僕がさいきんJ-POPに凝っているという話をすると、岡村孝子の『liberte』というアルバムを薦めてくれた。シンセの音色や使い方が当時のUKロックのナウいところをばっちり抑えていて、かのボビー・ギレスピーも在籍していた伝説のバンド、The Wakeにもどこか通じるものがあるのだという。他にも平井堅の“KISS OF LIFE”は2ステップビートがカッコいい、とかいろいろ僕に教えてくれた。
