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その選曲が、映画をつくる

映画「ザ・バイクライダーズ」の音楽と、サブカルチャーの構造的宿命

2024.11.27

#MOVIE

クライマックスを彩るThe Shangri-Las “Out in the Streets”

そうした巧みな選曲の中でも、作品内容との共鳴という視点から最も重要と断言できるのが、1960年代を代表するガールズポップグループの一組=The Shangri-Lasによる“Out in the Streets”の存在である。

1964年、名プロデューサーのシャドウ・モートンによって送り出された彼女たちは、同年9月にシングル曲“Leader of the Pack”をリリースし、ナンバーワンヒットを獲得した。この曲は、随所にバイクのエンジン音が鳴り響くことからもわかる通り、無謀なバイク乗りの青年との恋と、その青年の事故死という悲劇的な内容を持つ歌であり、この時代のバイカー集団の刹那的なライフスタイルを象徴する存在といえる。同曲が本作の中で流れることはないが、ここで歌われる悲劇は、本作を貫く哀切のトーンと大いに重なり合うものだ。おそらくはニコルズ監督自身も、一部の観客が抱くであろうそうした連想を前提とした上で、一連の流れでリリースされた別のヒット曲“Out in the Streets”を使用しているのではないかと推察される。

冒頭からロマンティックなコーラスが流れ出し、一抹の寂寥感と切なさが漂う中で歌われるのは、次のような内容だ。抜粋の上、歌詞を引こう。

彼はもう 不良たちとそこらをぶらついたりしない

前みたいに野蛮なことだってしない

けれど 私には見える

彼の心がいまも街の外にあるのを

彼の内側で 何かが失われたのがわかる

彼の心はいまも街の外にある

彼はもう 不良たちとそこらをぶらついたりしない

“Out in the Streets”

多くの者たちが自身の青春を賭したバイカークラブでの日々とその変遷を描き出す本作『ザ・バイクライダーズ』のほろ苦いクライマックスを彩る曲として、これほどまでに完璧なトラックは他にないのではないだろうか。

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