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折坂悠太『呪文』短期連載

折坂悠太と、その「歌」のあり方。編集者・山口博之が「本は話し相手」とたとえて綴る

2024.9.13

折坂悠太『呪⽂』

#PR #MUSIC

安易な納得や熱狂、誤魔化し、ありきたりな共感に抗う、折坂悠太の言葉のあり方

歌詞集のタイトル案が出るまでに本や本屋についてのこの話を折坂さんにしたかどうか覚えていない。本を読むことは対話をすることと書いたが、『あなたは私と話した事があるだろうか』というタイトルは折坂さんが考えたものだ。「あなたは私と話した事があるだろうか」と冒頭に書かれたエッセイ「雑草と花」から取られている。

そもそもこのエッセイも本の最初に掲載するものとして書かれたわけではない。「私の話はぼんやりとしていて、わかりにくいだろう。でも、いつもそちらを向いている」と書かれた締めの言葉が、この本全体を貫く折坂さんの態度表明として冒頭に据えるべきだと考えた。

折坂悠太『たむけ』(2016年)収録曲

折坂さんは自分をぼんやりとしてわかりにくいというが、そうだろうか。たしかにライブのMCは、わかりやすい近況報告やアジテーションではなく、ライブのMCとしては珍しいやさしく散文的なものであることが多い(『フジロック』では叫んでましたね)。

折坂さんの言葉や詞はわかりにくいのではなく、都合のいい言葉で私たちを安易な納得や熱狂へと誘ったり、誤魔化したりせず、ありきたりな共感で終えることもしない。熱狂に巻き込まれることなく傍観するのでもなく、淡々と熱く、ためらいながら、抗いながら、目をそらさず、真摯に「いつもそちら(私たちの方)を向いている」。

折坂悠太『トーチ』(2020年)を聴く
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