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音楽に詳しい友人の家のような、居心地の良さとワクワク感
その話を聞いて思い出したのがSILENCIOのインスタに載っているブラジル音楽のコレクション。ここにはブラジルのシンガーソングライターのミルトン・ナシメント(Milton Nascimento)のレコードがいくつか載っているのだが、それに加え、ミルトン・ナシメントの盟友たちや彼が自身の作品に起用した共演者、彼の共演者の共演者のレコードまでもが幅広く載っている。その並びを見れば、荒山さんがレコードのジャケットなどに記されているクレジットなどを頼りに人脈を辿りながら「自分なりに」集めたのがわかるというもの。既存の文脈に囚われてはいないが、闇雲に買い漁っていたわけでもない。荒山さんの話を聞きながら、インターネット以前、誰もがそんなやり方で地道にレコードを買っていたよな、なんて考えている自分がいた。

初めて伺った時から、SILENCIOの選曲には「人」が滲み出ていると僕は感じていた。どこかにある文脈ではなく、自分の文脈を大事にしている店だなとも思っていた。荒山さんの話を聞けば、それは、自分の志向をそのまま出したらそれが店のカラーになった、ということであり、素直に自分が好きなものを出している、ということでもある。「(めちゃくちゃ詳しい)いちリスナーの音楽遍歴」みたいなものをシェアしてくれている、とも言えるかもしれない。そんな極めてパーソナルな選曲をいつも自然体でやっていることが、音楽の雑多さにもかかわらず、リラックスできる理由なのかもしれないとも思った。ここには、音楽に詳しくて、レコードをたくさん持っている気の置けない友人の家に遊びに行って、気になったレコードをあれこれ聴かせてもらうような居心地の良さとワクワク感がある。どこかにありそうだけど、きっとどこにもない絶妙な塩梅。少なくとも比類する店は他に浮かばない。

ちなみに僕がここには絶対に行こうと思った理由は、マルルイ・ミランダ(Marlui Miranda)というアーティストのレコードがインスタにアップされていたこと。アマゾンの先住民をルーツに持つブラジルのシンガーソングライターの知る人ぞ知るアルバムだ。こんなレコードが好きな店なら行くたびに発見があるんだろうと思ったし、実際その予感が当たっていたことは言うまでもない。

《SILENCIOが選ぶ5枚》

・Doug Carn『The Doug Carn Trio』
・Caetano Veloso『Caetano Veloso』(1986)
・Cheikh Tidiane Fall, Bobby Few, Jo Maka『Diom Futa』
・Willem Breuker『Lunchconcert For Three Barrelorgans』
・Muneer A.F. & The Rhythm String Band Vol III『For Them』
*Doug Carn『The Doug Carn Trio』、Willem Breuker『Lunchconcert For Three Barrelorgans』、Muneer A.F. & The Rhythm String Band Vol III『For Them』はサブスクリプションサービスにありません
SILENCIO
住所:東京都練馬区立野町10-37
営業時間:水~金=16:30~24:00 土・日・祝日=14:00~21:00
定休日:月・火
https://www.instagram.com/silencio_kissa