INDEX
「高くないレコード」ならではの魅力
ロンパーチッチを営む齊藤さんご夫婦は、二人ともめちゃくちゃたくさんジャズのレコードを買っている。日々レコードショップに通い、レコードを買い、そのレコードを店でかけているのだが、基本的に選ぶ基準が話題やトレンドではない。彼らは自分たちの視点で日々レコードを買っている。その営みはInstagramに綴られているのでぜひ見てほしいのだが、「以前から〇〇くらいの価格で出てくるのを待っていた。ようやくその値段で見つけたから買った」「このレーベルのレコードを買ったらけっこう良かったので、安かったから買ってみた」「以前に買ったのは日本盤だったけど、ドイツ盤が安くてきれいだったから買い換えた」など、レコードを日々買っている人にとってリアルすぎるエピソードが並んでいる。人気の新譜をバンバン買うのでもなければ、プレミアがついた希少なレコードをコレクションするのでもなく、僕ら庶民が買うようなやり方で限られた予算の中で「ちまちまと」レコードを買っているわけだ。

だから、ロンパーチッチではいつも「高くないレコード」がかかっていることになる。トレンドと無縁で、新作でもなく、プレミア盤でもないけど、内容は素晴らしいレコードがいつもかかっているのがここの魅力だ。「このアーティストがこんなレコード出してたんだ!」「このレコードは謎だけど、この有名ミュージシャンがひっそり参加しているんだ!」みたいなことがいつも起きる。みんなが欲しがるレコードやみんなが知っているレコードじゃないところから、絶妙に面白いものを選んでくれる。中にはもちろん知っているアルバムも含まれていて、「このレコードってこんなに良かったっけ?」みたいな発見や驚きもある。ここのオーディオシステムとこの店の雰囲気だからこそ、聴きなれたレコードがびっくりするほど魅力的に響いてくるのだ。
