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統一感のある選曲の中に、様々な文脈が混じっている
BAR MEIJIUもまさにそんな「その店にしかないオリジナリティ」がある完成度の高いバーだ。
ジャズやポストクラシカルなどを中心に、店主の松本圭祐さんが選んだ新旧様々なジャンルのレコードがかかっているのだが、「BAR MEIJIUっぽい音楽」が常に流れている、としか言いようがない選曲になっているのがここの特徴だ。

個人的に気に入っているのはここの壁に飾られているレコードの並び。ジャズの名門レーベル「ブルーノート」のタイトルがずらっと並んでいるのだが、そこには定番だけでなく、DJから再評価された作品や21世紀以降の新しいジャズも含まれているし、スルーされがちな時期の良作もさりげなく並んでいる。そのブルーノートの趣味の良いチョイスはそのままこの店の選曲の傾向を表している。

いわゆる「バー」の落ち着いた雰囲気に合わせたレコードが選ばれているのもあり、テイストは近いものがかかることが多いのだが、似たテイストの中に様々な文脈が絶妙に混じっている。個人的にグッとくるのは、現在のジャズシーンに影響を与えた1980〜1990年代の名プレイヤーの作品がしれっとかかること。既存の「東京のBGM」の文脈からすっぽりと抜け落ちているところをさりげなく持ち込んでいる。かと思えば、レコード屋で1,000円以下で売られていそうな何でもないジャズのレコードもかかっていたりするのだが、どんなレコードもこの店の「シンプルで木の温かみもありつつ少しだけ武骨」な雰囲気そのもので、まるでそこにあるべきインテリアのように鳴っている。

そのために高音質でありながら同時にやさしい手触りで再生することができるオーディオが揃えられているのもここのこだわり。この店のムードそのもののニュアンスがTANNOYのスピーカーからやわらかく鳴っている。
そんな環境だからか、ここではひと昔前にトレンドだったレコードが新鮮に聴こえることもあるし、リリースされたばかりの新譜がずっと前からあったレコードのように響くこともある。BAR MEIJIUではあらゆるレコードが既存の文脈ではなく、この店にふさわしいサウンドとして鳴っていて、特別な空間を作り上げている。
