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『イカ天』とバンドブーム論――『けいおん!』から人間椅子まで

人間椅子の世界的ブレイクは必然だった。『イカ天』時代からブレない個性を紐解く

2025.3.18

#MUSIC

日本文学の影響が色濃い歌詞が作る世界観

人間椅子というバンド名は、奇怪で幻想的でエログロナンセンスの系譜に位置づけられる作品を多数残した江戸川乱歩の小説『人間椅子』に由来する。外見に劣等感を持つ椅子職人が、若く美しい女流作家の屋敷の椅子の中に潜み、皮一枚を隔てて女体の感触に溺れるという淫靡な小説だ。乱歩に限らず、ギター / ヴォーカルの和嶋慎治(Gt / Vo)と鈴木研一(Vo / Ba)はいずれも日本文学に明るいことで有名だ。

特に和嶋は父親が中学の国語教師で自宅に本が沢山あり、乱歩に限らず、推理小説やSF、怪奇小説を貪り読んでいたという。小学生の頃には小松左京や眉村卓のSF小説に耽溺。高校時代には無頼派の織田作之助や坂口安吾を愛読し、文芸部に所属して小説を書いたこともあった。「堕落したり破綻したり道から外れるほうがカッコイイと思っていた」(和嶋慎治『屈折くん』)のは、これらの作家の影響だという。30周年記念アルバム『新青年』のタイトルは、江戸川乱歩、横溝正史、夢野久作らが寄稿していた雑誌から採られている。

終末、破滅、狂気といったイメージが湧きあがってくる歌詞の源泉には、コナン・ドイル、星新一、ハワード・フィリップス・ラヴクラフト(註)、エドガー・アラン・ポーなどがいる。『イカ天』で披露した“陰獣”も、ラヴクラフトのクトゥルフ神話(註)を、夢野久作的土着性で解釈したものだという(註)。哲学用語や仏教用語、現代詩のような言い回しを多用するのも歌詞の特徴だ。難解でデカダンな言葉をチョイスする傾向は結成初期から顕著で、グロテスクで毒々しい空気が匂いたつ。

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