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短期連載:『HOSONO HOUSE』再訪

細野晴臣と『HOSONO HOUSE』の国内への影響。安部勇磨ら三者のカバーから考える

2025.1.30

#MUSIC

「ジャンル」や「スタイル」では捉えきれない『HOSONO HOUSE』に息づく感覚

安部勇磨の“冬越え”については、さっきも書いたように、土台には“さよならアメリカ さよならニッポン”と『HOSONO HOUSE』の「あわい」がある。バンドを離れて自分の好きなことができる安堵と未知の世界へ踏み出す不安、その間での揺れ方は、ソロ活動でアメリカツアーを精力的におこなう安部自身の現在の心境とも重なってゆくものだろう。

Cornelius“薔薇と野獣”は、『夢中夢』(2023年)以降なテイストを持つバンド演奏の醍醐味を残しつつ、曲が先に進むにつれダブ的なカオスへと展開し、夢の向こうへと道を探る。小山田の声の震えが伝わるほどの生々しいボーカル録音には狭山ハウスでの冒険的な録音環境への思いがあるかのよう。中盤からの展開には『HOSONO HOUSE』の時点ではまだ細野が体験していなかった瞑想的な境地、テクノロジーがもたらす未来の音との出会いがきっと意図されているだろう。

V.A.『HOSONO HOUSE COVERS』収録曲

くくく“CHOO CHOO ガタゴト”が、アルバム中もっとも自由奔放なカバーであることは衆目一致するところだろう。『HOSONO HOUSE』の頃はまだアメリカ西海岸しか実体験していなかった細野が、やがて広く体験してゆく異世界の音楽への道案内を、未来から来た天使のようにくくくの2人が耳元でささやいているようにも思える。想像と体験の「あわい」が作り出す地図の上を、くくくと細野の列車はガタゴトと走るのだ。

V.A.『HOSONO HOUSE COVERS』収録曲

こうしたカバーが日本から生まれているということの面白さが、逆に海外に伝わるといいなと思う。『HOSONO HOUSE』はスライ・ストーンやジェームス・テイラーの影響を受けた日本人の音楽だ、と解説するよりも、「ジャンル」や「スタイル」という線引きを越えて「あわい」に息づいているという意味でユニバーサルな価値を持つ作品だと考えたい。

「人間」は「人」と「人」の「間(あわい)」と書くが、つくづくそれはよくできた言葉で、『HOSONO HOUSE』は、人と時代の巡り合わせによって生まれ、半世紀を超える大きな「あわい」を作りながら、今なお現代も揺らしているんだなというのが、この3曲を聴いて心から思うことだ。

V.A.『HOSONO HOUSE COVERS』アートワーク写真(各社音楽サービスで聴く

『HOSONO HOUSE COVERS』(LP)

2024年11月6日(水)発売
価格:5,500円(税込)
HHKB-001

[SIDE A]
1. 相合傘 / TOWA TEI
2. 福は内 鬼は外 / John Carroll Kirby feat. The Mizuhara Sisters
3. 住所不定無職低収入 / mei ehara
4. CHOO CHOO ガタゴト / くくく(原田郁子&角銅真実)
5. 冬越え / 安部勇磨
6. 僕は一寸 / Mac DeMarco

[SIDE B]
1. 恋は桃色 / Sam Gendel
2. 終りの季節 / rei harakami
3. 薔薇と野獣 / Cornelius
4. パーティー / SE SO NEON
5. ろっかばいまいべいびい / 矢野顕子

https://hosonohouse.lnk.to/COVERS
https://hosonohouse-cover.com/

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