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細野晴臣との近しい関係から紡がれた3つのカバー
本稿のテーマは、『HOSONO HOUSE COVERS』に収録されている安部勇磨“冬越え”、Cornelius“薔薇と野獣”そして、くくく“CHOO CHOO ガタゴト”の3曲を題材にして、『HOSONO HOUSE』の日本国内での影響を考察せよ、というものだった。
この3組に共通していえるのは、他の参加アーティストよりもかなり細野と近い距離にいるということだ。安部は『音楽ナタリー』の連載コラム「細野ゼミ」で、ハマ・オカモトと共に細野から音楽講義を受けてきた。Corneliusの小山田圭吾は再始動したYellow Magic Orchestraで2008年からサポートを務めていた。

原田郁子と角銅真実の音楽ユニットである「くくく」は、2022年6月26日大阪中之島公会堂でおこなわれた細野にとって5年ぶりのコンサートを奔放な演奏でバックアップした。安田成美が40年ぶりにセルフカバーした“風の谷のナウシカ(2024 Ver.)”でも、細野とのトラック制作に2人は関わっているし、2024年の6月に行われたバリ島での公演にも細野に帯同している。

そうした距離の近さが多少は作用しているのか、この3者のカバーからは、細野の「あわい」を、音楽キャリアや性格など、多角的な視点から探っているような眼差しがなんとなく感じ取れる。会話から感じとった空気とか、ユーモアとか、音楽愛というようなものも含まれるだろう。つまり、日本国内への広い影響というより、細野と近くで接する人々が受けてきた影響と問いかけの最新バージョンといったほうがいいかもしれない。