千葉県佐倉市のDIC川村記念美術館の規模縮小と都内移転が発表された。
1990年に開館し、印刷インキなどで知られるDIC株式会社が関連企業とともに20世紀美術に主眼を置いたコレクションを収集 / 公開する同美術館。モネ『睡蓮』やシャガール『赤い太陽』など754点にのぼるコレクション、作品にふさわしい空間づくりを目指した建築、四季折々の変化が楽しめる自然環境の三要素が調和した施設であることが特徴となっている。
しかし、2024年6月末時点の簿価ベースで総額112億円となる保有資産の観点から見た場合、資本効率という側面から必ずしも有効活用されていないとして、社外取締役のみで構成された「価値共創委員会」での審議を開催。その内容を受け、8月27日(火)に運営効率化のために規模を縮小して東京への移転を想定した「ダウンサイズ&リロケーション」を具体的なオプションとして検討。運営中止も含めた経営の再検討と、2025年に美術館を一時休館とする中間報告が発表されていた。
発表を受け、佐倉市は存続を求める署名を募集。5万筆を超える署名が集まり、美術館の来場者数が増加するなど、大きな反響が起こっていた。美術館側は来場者数の増加に伴い、一時休館開始を当初予定していた2025年1月下旬から3月下旬に延期すること、レストランおよび茶席を予約制とすること、無料送迎バスの増便、2025年に来館者への感謝の気持ちを込めたコレクション展示を行うことなどを発表していた。
今回発表された最終報告では、適切な移転候補先を見つけることを前提に「ダウンサイズ&リロケーション」を最終方針として実行することが決定。保有作品数を1/4程度に縮小すること、リロケーション先は東京都内において美術品を一般公開できる場所とすること、公益性が高い団体との連携を前提とすることなどを定義し、これらを満たす特定の団体の施設を移転候補先として交渉を進め、2025年3月末までの最終合意と正式発表を目指す。
また、並行して、美術品の売却に向けて、売却対象とする作品とその売却実行プロセスについて検討を進めること、佐倉市の現美術館については、移転の有無に関わらず、2025年3月31日(月)を最終営業日として翌4月1日(火)から休館するが、休館後の地域住民による庭園や周辺施設の継続的利用等の可能性について、佐倉市と誠意をもって協議していくことも明らかになった。これを受け佐倉市の西田三十五市長も「市にとって大変残念な結果であり、大きな喪失感を感じております」としたうえで、「地域に調和した価値ある空間」が保たれるよう協議を継続していく旨のコメントを発表している。
なお、美術館は12月22日(日)で年内最終営業を終えており、2025年1月1日(水・祝)まで庭園を含め全館休館。1月2日(木)から26日(日)までは企画展『西川勝人 静寂の響き』、2月8日(土)から3月31日(月)までは『DIC川村記念美術館1990–2025 作品、建築、自然』が開催される。
『西川勝人 静寂の響き』
2024年9月14日(土) - 2025年1月26日(日)
時間:
9:30-17:00(入館は16:30まで)
休館日:
月曜(ただし祝日の場合は開館)、9月17日(火)、9月24日(火)、10月15日(火)、11月5日(火)、12月24日(火)-1月1日(水)、1月14日(火)
主催:
DIC株式会社
後援:
千葉県、千葉県教育委員会、佐倉市、佐倉市教育委員会
会期中のコレクション展示
コレクションViewpoint
「追悼 桑山忠明 1932–2023」
「追悼 フランク・ステラ 1936–2024」
会期:2024年7月6日(土) - 2025年1月26日(日)
会場:201室
『DIC川村記念美術館 1990–2025 作品、建築、自然』
2025年2月8日(土) - 3月31日(月)
時間:
9:30-17:00(入館は16:30まで)
休館日:
月曜(ただし2月24日、3月31日は開館)、2月25日(火)
主催:
DIC株式会社