千葉県佐倉市のDIC川村記念美術館の一時休館発表を受け、佐倉市が対応を発表した。
1990年に開館し、印刷インキなどで知られるDIC株式会社が関連企業とともに20世紀美術に主眼を置いたコレクションを収集 / 公開する同美術館。モネ『睡蓮』やシャガール『赤い太陽』など754点にのぼるコレクション、作品にふさわしい空間づくりを目指した建築、四季折々の変化が楽しめる自然環境の三要素が調和した施設であることが特徴となっている。
しかし、2024年6月末時点の簿価ベースで総額112億円となる保有資産の観点から見た場合、資本効率という側面から必ずしも有効活用されていないとして、社外取締役のみで構成された「価値共創委員会」での審議を開催。その内容を受け、8月27日(火)に移転や運営中止も含めた経営の再検討と、2025年1月下旬から美術館を一時休館とする中間報告が発表されていた。
発表を受け、佐倉市長・西田三十五は8月29日(木)に市のホームページ上でコメントを発表した。美術館の館長から直接今回の報告を受けたことを明かし、佐倉市での運営存続を切望。早急に存続に向けた有効な方策に取り組むとしている。
また、9月5日(木)からは、佐倉市魅力推進部文化課を事務局とする「DIC川村記念美術館の佐倉市での存続を求める会」が市のホームページ上で署名の募集を開始。オンラインまたは窓口および郵送で、9月30日(月)必着として受け付けている。オンラインでの署名数は9月9日(月)12時時点で24473件にのぼっている。
さらに、千葉県知事・熊谷俊人や、2018年に同美術館から重要文化財・長谷川等伯の『烏鷺図屏風』を収蔵した千葉出身の起業家・前澤友作もSNS上などで反応。熊谷は8月29日(木)開催の知事定例記者会見の質疑応答で、美術館が千葉県の文化芸術振興や観光振興に果たしてきた役割に触れ、休館となれば大きな損失となる旨を述べた。前澤はX(旧Twitter)上で『烏鷺図屏風』の修復作業が完了したことを明かし、美術愛好家として美術館に協力したい旨を投稿している。
なお、休館発表を受け、美術館の来場者数が増加。レストランや茶席の待ち時間が長くなっているほか、安全確保のため、9月14日(土)から開催の企画展『西川勝人 静寂の響き』の2回目以降のクロストークと学芸員によるギャラリートークの予約方法がオンラインでの事前予約制に変更された。9月9日(月)から13日(金)は展示替えのため休館で、13日(金)は庭園、レストラン、ギフトショップのみの営業となる。
『西川勝人 静寂の響き』
2024年9月14日(土) - 2025年1月26日(日)
時間:
9:30-17:00(入館は16:30まで)
休館日:
月曜(ただし祝日の場合は開館)、9月17日(火)、9月24日(火)、10月15日(火)、11月5日(火)、12月24日(火)-1月1日(水)、1月14日(火)
主催:
DIC株式会社
後援:
千葉県、千葉県教育委員会、佐倉市、佐倉市教育委員会
会期中のコレクション展示
コレクションViewpoint
「追悼 桑山忠明 1932–2023」
「追悼 フランク・ステラ 1936–2024」
会期:2024年7月6日(土) - 2025年1月26日(日)
会場:201室