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お菓子作りが心に傷を負った人の「セラピー」になり得るのか

ところで、本稿を読んでいる方の中には、お菓子作りで苦い思いをしたことがある人もいるのではないか。かくいう筆者も、数年に一度くらいの頻度でお菓子を作りたくなるのだが、予定通りに膨らまなかったケーキを錬成したことは何度もある。無塩バターの存在を知らず、ガトーショコラがしょっぱくなったことも、しばしば……(これはお菓子を作る以前の問題だが)。
たとえば、第1週で登場した外資系コンサルタント・順子(土居志央梨)は、フルーツタルトを作りにやってくる。作ったことがある人はわかると思うが、なかなか難易度の高いメニューだ。フルーツのカットや配置にもセンスが問われる。佐渡谷は「いいの、自由で」とあっけらかんとしているのだが、順子の背景を知らない葵はたびたび口を出してしまう。パニックになった順子の手元には、ドロドロのフルーツタルトだけが残った。
お菓子作りって難しいのでは? そもそも、お菓子作りが、心に傷を負った人の「セラピー」になり得るのだろうか? ーーそんな疑問がふと浮かんだのだが、グルメ漫画の金字塔であり実写化もされた『きのう何食べた?』(講談社)にも、お菓子作りのエピソードがあったことを思い出した。