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過去と現代をつなぐ巧みな演出

『海に眠るダイヤモンド』は、独特の構成をしている。玲央(神木隆之介)といづみ(宮本信子)を中心とした現代パートと、鉄平、朝子(杉咲花)、リナ(池田エライザ)、賢将(清水尋也)、百合子(土屋太鳳)を中心とした端島パートを行き来しつつ、端島パートは数年単位で時間を飛ばしながら物語が進んでいく。
正直、見づらさもある構成だが、巧みな演出でその難関をクリアしつつ、過去と現代のつなぎ方を工夫することで、テーマを膨らませることにも成功している。第2話では、台風が去った後に水瓶から水を飲む百合子と蛇口を捻って水を出すいづみが重なり、第3話では、朝子が中之島で見上げた桜といづみが玲央に見せたビルの上の一本の桜が重なる。水という人間にとってなくてはならないもの、植物という生命。いつの時代も変わらない、過去から現代まで脈々と続いてきた営みを感じさせる演出だ。
『海に眠るダイヤモンド』は、脚本・野木、メイン演出・塚原、プロデューサー・新井というチームでこれまで手掛けてきた『アンナチュラル』や『MIU404』のように、意表をつく展開があるわけではない。描かれているのは、島で育まれる故郷への誇り、恋人や友達・家族への愛など、シンプルで普遍的な感情だ。それらが端島という特殊な土地を舞台に描かれることで、人間の力強い生命力を感じさせる。