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やっぱ自分のことが分からない。200人くらいいる自分を「1人ずつ肯定する旅」をしてる。(SIRUP)
SIRUP:もう1つ聞きたいのが、自分たちの世代だとレゲエとHIP HOPはバチバチに対立していたじゃない? 今はアイドルもHIP HOPも全盛期だけど、この動きをどう捉えてるのかなって。
SKY-HI:俺たちが20代後半の時って、まさに韓国がそうだったじゃん。アイドルとHIP HOPが全盛で、HIP HOP性の強いアイドルのラッパーと、アイドル性の強いHIP HOPのアーティストがコラボすることが沢山あったし、それが羨ましかった。だから今自分が20代前半だったらトライしてみたかった気持ちもあって、羨ましい。でも、俺が引退してからじゃなくて、自分が現役でマイクを握っているタイミングで、日本の音楽シーンがここまでくることができたのは良かったなって。

SIRUP:それを実際に担ってますしね。
SKY-HI:何かを担っている自負はあるし、もっとやりたいこともいっぱいある。ちゃんみなと一緒に『No No Girls』もやったけど、ちゃんみなはコロナ禍に週5で会ってた親友でもあるし、よく一緒にいる中で、自分自身をジャンルとして提示するってことを、まだ自分はやり切れてないなって反省して。だから今年は久しぶりにアルバム出すけど、ちょっと頑張ろうって感じ。
―何を頑張りたいんですか。
SKY-HI:存在証明。BMSGの中ではプロデューサーとしても社長としても権力勾配が自分に傾いている分、承認欲求を消す必要があるって意識してて。BE:FIRSTと一緒にやっていくことでその欲求が満たされてもいたから、承認欲求がない時期を2年くらい過ごしてて。その状態でいられること自体は人としては素晴らしいことだけど、表現欲求も薄くなっていて。それが去年、承認欲求が今一番強い時期の若いアーティストたちと話したり、一緒に物を作ったりする中で、「今、俺、一番頑張らなきゃ駄目な時だ」と思って、また最近めっちゃラップしてる。
―承認欲求の話でいうと、自分がやりたいことと、自分が他の人のためにやりたいことっていうのが混ざって、アーティストがプロデューサーの所有物になっちゃうっていうのは、問題としてありますよね。
SKY-HI:そうならないようにしたいなと思ってたんけど、今は特に意識してないかも。シンプルにそれが、やるべきことの優先順位に入らない。なんでアルバムを出すのかっていうと、それを「やりたい」ってだけじゃなくて、「やるべきこと」だと感じてるから。BMSGとしてBE:FIRST以外にも色んなアーティストがいて、「中1から見てきた新しいグループのデビューが今年あるよ」ってなったら、多分世間的な説得力をもう1つ作る必要があるなって。つまりBMSGっていう法人格での優先順位と、自分個人の「今やりたいこと」が重なってるから、フルスイングしてるっていう感じ。「やるべきこと」と「やりたいこと」が合致しない限りはリリースしないようにしようかなって思ってて。

―やりたいことを両方で見つけ、やりたいことがあり続けるっていうこと自体がすごい難しいよね。それはたとえばSIRUPの場合だったら、数字を追うこと以前に海外のアーティストと曲を作ることによって、新しい世界を知るとか、社会的な課題に対する活動をするとかあると思うんだけど。
SIRUP:そうですね。あとすごいパーソナルな話になってくるけど、やっぱ自分のことが分からないんですよね。200人くらいいる自分を「1人ずつ肯定する旅」をしてる感覚もあって。
SKY-HI:なんか分かるかも。
SIRUP:色んな人と向き合うことで自分を知っていく、みたいなのが好き。やっぱり海外コラボとか、文化圏を超えていくと、学びも出会いもすごくある。自分はまだ、めちゃくちゃ時間をかけて自分自身をコントロールしてる感じがあるけど、SKY-HIがこれだけ色々なことをやれるのって、そこが長けてるんだと思う。同時に、自分を大事にしてるじゃないですか。
SKY-HI:一応してると思う。できてるはず。
SIRUP:だから、今のBMSGのために自分をもう1個格上げしたいっていうのもあると思うし。