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NEWS EVENT SPECIAL SERIES

ONE OK ROCKのワールドツアー初日レポート 「世界を制する」のは夢ではない

2024.9.20

#MUSIC

photo by Masahiro Yamada
photo by Masahiro Yamada

あんなに大きな合唱を、日本で、ましてや日本のバンドのライブで聴く日が来るなんて思いもよらなかった。観客の誰もが声の限り同じ曲を歌うその幸せそうな光景は、YouTubeで見る海の向こう、外国のライブのもので、周囲の目を気にしがちな日本では見られないものだと思っていた。ONE OK ROCKのライブを見るまでは。

9月14日(土)と15日(日)の2日間、東京・味の素スタジアムで開催されたONE OK ROCKのライブは、世界7都市8公演を回るバンド最大規模のワールドツアー『ONE OK ROCK 2024 PREMONITION WORLD TOUR』の幕開けとなるもの。屋外の単独公演としては、2日でおよそ11万人を動員した2016年開催の『ONE OK ROCK 2016 SPECIAL LIVE IN NAGISAEN』以来、8年ぶりだという。

フロントマン・Takaが終始口にしていた「日本のバンドとして世界を制する」という言葉が印象に残った。東京公演を皮切りに台湾、ヨーロッパ、そして北米と文字通り世界を回り、さらには新しいアルバムの制作にも取り掛かっているONE OK ROCKは、間違いなくグローバルスケールの活動を展開していると言えるだろう。しかし、実績以上にスタジアムを掌握するライブパフォーマンスとそれに呼応するオーディエンスの熱量は「世界を制する」ことが夢のまた夢ではないことを証明していた。

ここでは、初日9月14日公演の模様をレポートする。

およそ8年ぶりの野外単独ライブにしてバンド史上最大規模のワールドツアー。ファン垂涎のセットリスト

いろんな街で聞こえてくる秋祭りのお囃子と体感気温が釣り合わない9月の土曜日、およそ5万人のONE OK ROCKファンが味の素スタジアムに駆けつけた。電車の車内から今回のツアーTシャツを着た人で溢れ、駅を出るとさらに過去のツアーグッズを纏う人やPay Money To My Painといった日本のラウドロックを牽引してきたバンドのグッズを身につける人たちが最寄駅から会場までの道のりを埋め尽くし、あらゆる世代のロックファンから支持を受けていることが伝わってくる。

開演までの間、会場では2024年を象徴するアーティストのTylaやDua LipaといったアーティストからDepeche Modeまで、ジャンルや世代に縛られない楽曲が流れ、続々と入場する観客を受け入れる。その選曲は、『Eye of the Storm』(2019年)でアメリカのシーンから学んだことを詰め込んだポップアルバムに挑戦し、『Luxury Disease』(2022年)で再びロックに正面から向き合ったONE OK ROCKの姿勢とリンクするかのよう。

定刻を少しすぎた頃、客入れの音楽が止み、スクリーンにはTakaの過去の力強い発言の数々が映像として流れる。新しい時代の先駆者になる岐路に立たされていること、前時代的な既存のシステムが全く通用しない令和の時代にONE OK ROCKのやり方を突きつけていくこと。日本のバンドがいつか世界を制する可能性にONE OK ROCKが挑み続ける限り、夢や希望がない時代でも諦めずに生き抜いて欲しいというファンへのメッセージ。世界を相手に戦うバンドのフロントマンの熱量は観客に伝播し、客席から突き上げられる拳は段々と高くなっていく。

ステージ後方にTaka(Vo)を除く3人のメンバーToru(Gt)、Ryota(Ba)、Tomoya(Dr)が登場し、それぞれの楽器の音を重ねていく。そしてステージ前方、The Mad Capsule Marketsを彷彿とさせるガスマスクを着けたTakaが登場すると会場の盛り上がりは最高潮に。マスクを取り、最初に披露された楽曲は”Delusion:All”。先述のTakaの発言通り、民主主義や既存のシステムに疑問を投げかけた歌で、早くも友人同士で肩を組んでステージ上の4人に応えようとするオーディエンスがあちこちで見受けられた。

photo by Kosuke Ito
Tomoya(photo by Kosuke Ito)

続けて披露されたのは、”欠落オートメーション”と”Re:make”。イントロが鳴るたびに1曲前よりも大きい歓声が起こる。オーディエンスの興奮は止まるところを知らず、もはや全席指定であることが不憫にすら思えるほどの盛り上がり。10年以上前にリリースされた楽曲の連続に驚いたオーディエンスからのどよめきなど、折り込み済みかのような表情を見せるTakaが「皆さんと花火大会に負けない楽しい夏の思い出を作りに来ました!」と、この日初めてのMCで観客に挨拶を告げて演奏されたのは”じぶんROCK”。これもまた10年以上前の楽曲だが、Ryotaのたった2つのスラップ音は一瞬で5万人のオーディエンスを掌握し、空には虹色の煙幕があがった。<お手手のシワとシワをあわせんの‼︎>と巻き起こった大合唱は壮観だった。

Ryota(photo by Matty Vogel)

Toru、Ryota、Tomoyaも一言ずつこの日のライブへの意気込みを交えた挨拶を済ませる。4人の掛け合いからは、ライブをする国が増えても、ツアーの規模が大きくなっても変わらないものがバンドのコアにあることを感じさせ、来年20周年を迎えるバンドの確かな信頼関係が伝わってきた。

Toru(photo by Masahiro Yamada)

ONE OK ROCKが鳴らす、世界に挑むためのスタジアムロック

完全に日が落ちたスタジアムでは、照明が一段と映え、さらに増していくスタジアムライブらしい壮大な雰囲気。それに呼応するように、セットリストも近年の楽曲へとシフトし、披露されたのは”Decision”、”Renegades”、”Wonder”。パワフルな大合唱や美しく荘厳なギターリフが暑さの落ち着いた夜空に響きわたる。西日が射していたライブ冒頭の疾走感溢れる楽曲群とは対照的な、スケールの大きいスタジアム級のロックアンセムたち。ONE OK ROCKの代表曲の多さに改めて感心するとともに、1stアルバム『ゼイタクビョウ』(2007年)から最新アルバム『Luxury Disease』までの時間の流れも考えずにはいられなかった。

国内外を問わず、日本でスタジアムやドーム公演を開催するアーティストが多い現行の音楽シーンにおいて、ONE OK ROCKが提示していたのはプリミティブなスタジアムロック。花道もなければトロッコもない、至極シンプルなステージにあるのは、スタジアム映えする楽曲の数々とそれを奏でる4人のメンバー。MCでTakaも触れていたように、声を出したり、お酒を飲んで踊ったりするためだけの空間。ギミックで溢れた世の中にこれほど単純明快な場所は他にあるだろうか。

ライブは中盤に差し掛かり、”キミシダイ列車”、”Make It Out Alive”と激しい楽曲が続いたあと、披露されたのは”Wherever you are”。今この時間を噛み締めるように「風が気持ちいい」とこぼすTakaから、前日のリハで感じた会場の澄み切った夜空と心地良い風を受けて急遽アコースティックバージョンに変更されたことが明かされた。自然発生的に客席からスマホのライトが向けられ、Takaの歌声とToruのアコースティックギターに誰もが聴き入った。

photo by Matty Vogel

Takaが語るONE OK ROCKの使命

勢い衰えぬまま”Take what you want”、”カラス”、”Neon”といった楽曲を続けて披露したあと、本編最後のMCでバンドの使命や世界を目指すことについて淡々と語り始めた。

人生それぞれ役割があるとしたら、デカい壁を登っていくことがONE OK ROCKの役目であること、小さな幸せや失恋を歌うアーティストも、コンプレックスをポジティビティに昇華するバンドもさまざまいるなかで、世界を回る日本人だからこそ言えることがあること。世の中を舐めきっている自分だからこそ、思ったことを簡単に口にできる国ではない日本で、嫌われても言わなきゃいけないことを愛を持って声に出す使命を背負っていること。そして、世界中を回って、「日本のバンドが世界を制することを突きつけてくる」ことを宣言した。

Taka(photo by Masahiro Yamada)

さらに、そんなバンドの「自分が動けば世界が変わること」を伝えるためのツアーだとしたうえで、改めてファンやスタッフへの感謝も強調しつつ「みんなも同じ気持ちで自分の限界を超えてほしい。僕たちはいつも1つです」と”We are”へ。オーディエンスから巻き起こったサビの大合唱は、鳥肌が立つほどにこの日披露されたどの楽曲よりも大きく、Takaのメッセージが伝わっていることは明らかだった。続く”Mighty Long Fall”では、会場全体がヘドバンで1つの大きなうねりを生み出し、友人同士で肩を組んだヘドバンが、隣り合わせたファンをも巻き込みながら、ヘドバンの最小単位が次第に大きくなっていく。最後には、ファン同士が前後左右、誰であろうと関わらずハイタッチを交わす光景へと変わり、本編は幕を閉じた。

結成20周年、ワールドツアー、そして世界を制すること

メンバーがステージを降りても会場の興奮は冷めやらぬまま、アンコールを望む声が”アンサイズニア”のイントロを歌う声となってあちこちから聞こえてきた。ほどなく、ONE OK ROCKの4人がステージに再登場。サプライズ初披露となる未発表の新曲を含む、”Let’s take it someday”と”Wasted Nights”の合計3曲を披露。初めて聴く新曲でも、聴き慣れたアンセムでも衰える気配のないオーディエンスの熱量は最後まで、突き上げられる拳の高さに表れていた。”Wasted Nights”のラストでは、これからワールドツアーに出るバンドを送り出すかのような大量の花火が打ち上がり初日の公演が終了。最後の瞬間までオーディエンスの歓声に手を振り応えていたメンバーが1人ずつステージから降りたあと、最後ステージに残ったTakaの「新しいアルバム、楽しみにしててください」という声は自信に満ちていた。

photo by Masahiro Yamada

Oasisの再結成ツアーも控える2025年は、再びロックが席巻する年になるだろう。日本には、そんな年に20周年を迎え、日本のバンドが世界を制することを掲げて現在進行形の音楽を鳴らすONE OK ROCKというバンドがいる。

ツアータイトルの「Premonition」は何かが起こりそうな強い予感という意味で、特に心穏やかでないことを指すときに使われる英単語だ。世界を股にかける彼らなら意味も承知の上だろう。ワールドツアーの開幕、さらには新しいアルバムと歩みを止めないONE OK ROCKが、世界規模でさらに世の中に「たてついていく」、ますますの快進撃を期待せずにはいられない。

セットリスト – 『ONE OK ROCK 2024 PREMONITION WORLD TOUR』2024年09月14日(土)東京・味の素スタジアム

  1. Delusion:All
  2. 欠落オートメーション
  3. Re:make
  4. じぶんROCK
  5. Save Yourself
  6. Decision
  7. Renegades
  8. Wonder
  9. キミシダイ列車
  10. Make It Out Alive
  11. Wherever you are
  12. Take what you want
  13. カラス
  14. Neon
  15. The Beginning
  16. We are
  17. Mighty Long Fall
  18. Stand Out Fit In
  19. 新曲(タイトル未定)
  20. Let’s take it someday
  21. Wasted Nights

『ONE OK ROCK 2024 PREMONITION WORLD TOUR』

2024年09月14日(土)東京・味の素スタジアム
2024年09月15日(日)東京・味の素スタジアム
2024年09月21日(土)台湾・KAOHSIUNG NATIONAL STADIUM
2024年10月05日(土)ドイツ・MITSUBISHI ELECTRIC HALLE
2024年10月07日(月)フランス・ZENITH
2024年10月11日(金)イギリス・OVO ARENA WEMBLEY
2024年10月18日(金)カナダ・COCA-COLA COLISEUM
2024年10月23日(水)アメリカ・KIA FORUM
https://www.oneokrock.com/jp/

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