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踊ってばかりの国インタビュー 『On the shore』に込めた逃避の肯定

2024.7.29

#MUSIC

口だけで音楽を作ろうとすると、結果的にいいものにならない

―タイキさんが「今までやってないこと」を提案してくれるという話でしたが、実際そういうアイデアを大切にしていると言えますか?

坂本:「今までやってなかったこと」みたいな探し方というよりは、自分の音楽的なブームとか、こういうふうにもアレンジできるかもとか、そのときの感じですかね。今回はちょっとトリッキーな拍子を入れたり、そういう提案が多かったかな。

坂本大季(Dr)

下津:僕は結構“兄弟”にびっくりして、こんな手段あったんやって。最初は8ビートでもいけちゃいそうな曲やったんですけど、フォークシンガー寄りの下津からは絶対出ない崩し方になって。マジで助かってます(笑)。

―まさに“兄弟”はリズムの組み立てが緻密ですが、これも誰か1人が引っ張ったというよりは、みんなで実際に音を出しながら構築していった?

下津:「Aメロはこのノリで、サビはこのノリをちょっと膨らまして、2番でちょっと踊りやすくしよう」みたいなディスカッションもしながらですけど、全員が肌感で決めていったような気がします。口だけで音楽を作ろうとすると、結果的にいいものにならへんというか、過去にそういう経験があったので、落ち着いた環境で、みんなで実際に合わせていく方がいいっていうのはありますね。

―こういうポリリズムとかは現代ジャズの影響があったりもするのでしょうか?

丸山:ジャズはすごく好きだから、自然にそうなっちゃう部分もあるかもしれないけど、“兄弟”は最初ハウスっぽい感じにしたいなと思ってて。でも踊ってはロックバンドだから、最終的にはロックに帰結するつもりでやってます。

―確かに、ベースのミニマルなアプローチはハウスとかダンスミュージック寄りですね。谷山さんのフレーズはどのように決まっていったのでしょうか?

谷山:どうだったっけな……最初は普通に単音でルートを弾いていた気がするけど、いつの間にかああなってたような。きっかけは全然覚えてないです(笑)。

左:谷山竜志(Ba)右:下津光史(Vo / Gt)

下津:あれよね、曲が組み上がってから、人前でできるくらいまで身にするのが難しかったっすね。「目隠しされてチャリンコ乗れるまでは」みたいな(笑)。

―2010年にリリースされた『グッバイ、ガールフレンド』の収録曲である“ムカデは死んでも毒を吐く”を再録したのはどういう経緯だったのでしょうか?

下津:昔の曲は恥ずかしくてあんまり振り返ったりしないんですけど、この曲は家で弾いててもグッとくるというか、今の時代にも当てはまってると思って。14年前の曲ですけど、「今も同じことでむかついてんねんな」というか、19歳の自分を裏切ってない安心感があったんですよね。でも当時のアレンジをそのままこのメンバーでやってしまうのはナンセンスだと思って……それは2、3年思ってたっすね。『moana』ぐらいから「ムカデやりたい」みたいにチラホラ言ってたんですけど、いいアレンジが思いつかなくて。でもある時、家でたまたまDADGADチューニングで遊んでたら「ムカデも(キーが)Dやし、いけるんちゃう?」みたいな感じで、あのリフが見つかって。この曲が一番ジャムってロックした曲というか、今回のアルバムで一番サイケ味がある曲やなと。アレンジ的にはBメロを作るのが大変でした。

谷山:拍が変だからね。

下津:リズムは歪んでいくのに、ギターはそのまま4拍子で刻むっていう。時々あるんですけど、ほんまにその部分はライブで来るたびにドキドキしてます(笑)。「耐えな! どっかしがみつくとこ探せ!」みたいな、丸太を探してる感覚になります。

―当時のガレージロック的なアプローチとは違うけど、ギターはかなり歪んでいて、たしかにこのアルバムの中ではサイケロックな側面を担っていますね。

大久保:アルバムの中で一番歪んでいるんで、楽しかったっすね。基本的にバッキングというよりはフレーズっぽい感じなんですけど、それが歌の邪魔をしないように、ミドルをできるだけ落として、ちょっとドンシャリ気味で音を作った感じですね。

丸山:僕も(大久保と)同じような感じで……昔のバンドみたいだなって(笑)。

左:大久保仁(Gt)右:丸山康太(Gt)

下津:唯一この曲だけ丸ちゃんの音にエコーをかけていて、後半の方どっちがどっちを弾いてるかわからない。あのぐちゃぐちゃになっていく感覚がサイケで好きですね。エンジニアさんは「やりすぎですよ!」って言ってましたけど(笑)。

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