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「歌のある音楽」に向き合うきっかけ
ー大学は東京音楽大学作曲指揮専攻に進んで、ただちょうどコロナの時期だったわけですよね。
梅井:そうなんです。コロナの影響で上京は2020年10月くらいだったんですけど、あの時期は友達を作りたくても外に出れないし、何もできなくて。でもトリオのアルバムが2021年1月に出たから、上京して4ヶ月でいきなりCOTTON CLUBでライブします、みたいな状況だったり、セッションに遊びに行ったら私の名前を知っている人もいたりして……。それがありがたいことでもあるんですけど、プレッシャーにはなりました。

ーでもその時期があったからこそ菅野咲花さんとの歌ものユニットであるharuyoiを本格的に始動させることができたわけですよね。
梅井:家でできることを考えて、始めたてのDTMで曲を作るようになったので、それは大きかったと思います。高校に入るまでは歌のある音楽にあんまり興味がなかったんですけど、高校に入って大貫妙子さんを好きになって、いろいろ歌を聴くようになって。そのタイミングでちょうど既存の詩に曲を書くっていう作曲科の課題が重なったんです。最初は全然できなかったんですよ。兵庫出身だから、標準語と関西弁のイントネーションがぐちゃぐちゃに混ざってしまって。それが曲になったときにすごく気持ち悪いから、作り直してきなさい、みたいに言われて、毎週落ち込んで帰っていました。
ーきっとその経験から「私も歌のある音楽が作れるようになりたい!」と思ったわけですよね。もちろん、菅野さんの存在も大きかっただろうし。
梅井:そうですね。彼女は元々クラリネット専攻で高校に行っていたんですけど、「やっぱり歌を歌いたい」って上京してきて、かっこいいなと思いました。彼女はお父さんにレゲエを聴かされて育ったとよく話しますが、その違うバックボーンがあるからこそ、彼女の発想や視点がとても新鮮で、一緒にいると刺激を受けます。
ー逆に、2人が共有しているのはどんな音楽ですか?
梅井:モノンクル、グレッチェン・パーラト、Hiatus Kaiyoteとか。「こういう音作りいいよね」みたいな話で「わかる!」ってなることは結構多いです。
ー『euphoria』というタイトルは菅野さんの好きなBTSの“Euphoria”から取ったそうですが、梅井さんご自身はどう感じていますか?
梅井:初めはしっくりきていなかったんですけど、次第にいいなと思うようになりました。私は本当に言葉にするのが苦手というか、一つの言葉に限定しちゃうことにすごく慎重になるタイプなんです。だから『euphoria』も初めは「『幸せ』って決め付けちゃうと、聴き手の受け取り方を狭めちゃうんじゃないかな?」みたいなことを危惧していて。でもリリースツアーの最終日に来てくれた友達が「今日のライブを見て幸せいっぱいになった」と言ってくれたときに、このタイトルにしてよかったなと思いました。
