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フランク・ザッパから学んだ「自分の音楽に嘘をついちゃいけない」
ー小さい頃からクラシックピアノをやっている子は「その道を突き詰める」みたいなイメージが一般的にはあると思うんですけど、学校のクラスメイトも、梅井さん自身もそうではなかったんですね。
梅井:私は超欲張りなんですよ。「これもできるようになりたい、あれもできるようになりたい」って昔から思っていて、ピアノももちろん大好きなんですけど、でもそれだけだと……。6歳からエレクトーンもやっていたんですけど、習っていた先生が編曲家でもあって、ジャンルを横断して詳しかったんです。それを見てすごく羨ましいと思って。「私もいろんな音楽を作れるようになりたい」と思って、そういう「羨ましい」の連鎖で今にたどり着いている気がします。Niacinやフランク・ザッパを聴くようになったのも、その先生の影響でした。

ーその先生からは音楽家としてどんなことを教わりましたか?
梅井:とにかく自由にやらせてくださったんですよね。最初は私がクラシックピアノをやりつつ、ポピュラーミュージックにも興味がある状態を危惧していたというか、エレクトーンをやっている間にピアノ一筋の子たちはメキメキと伸びていくわけで、「ピアノでコンクールを受けたいなら絞った方がいいんじゃないか?」っていうのもその通りだと思うんです。でも私の何でもやりたくなる性格を察してくれて、「自由にやっていいよ」って許してくださったことがすごく大きかったと思います。
ーそして、Niacinからフランク・ザッパまで幅広く教えてもらったと(笑)。
梅井:フランク・ザッパのドキュメンタリー映画『ZAPPA』(2022年)の中で「僕の生きがいは、自分が作った作品を家に持ち帰って1人で聴くこと。その時間のためにやっている」みたいなことを言っていて、それにすごく共感したんですよ。私はまだそんなに自分の作品をたくさん録ってきたわけではないけど、家に持ち帰って1人で聴く時間が本当に幸せで。フランク・ザッパは自分の音楽に一切嘘をついてないっていうのが、そのドキュメンタリーからひしひしと伝わってきて、胸いっぱいになっちゃって。
ーいい話ですね。梅井さんも自分の音楽には嘘をつかずに作りたいし、表現したいと思った?
梅井:今はSNSでいろんな情報が得られるじゃないですか。そういう中で生きていると、自分はどうしたいのか、時々わからなくなるんですよね。でもそういうザッパの生きざまを見ていると、「自分の音楽に嘘をついちゃいけない、それだけは忘れちゃダメだな」ってすごく思いました。