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奥平大兼、蒔田彩珠、窪塚愛流らこれからが楽しみな俳優たち

『御上先生』で演技が光るのは、松坂だけではない。3年2組の生徒を演じる俳優たちもこの作品の魅力を高める大切な要素だ。前述の通り、当初、3年2組の生徒たちは、それぞれに自分が置かれた社会からの理不尽に対する気持ちをくすぶらせていた。その怒りは、文科省官僚という、彼らにとっては社会そのものをイメージさせる人物である御上にぶつけられた。そうした物語の特性上、生徒を演じる俳優陣は、彼ら彼女らが抱える怒りを、セリフの激しさではなく、表情や空気感、声色で表現する必要がある。その意図を丁寧に汲み取った若き俳優たちの真摯な演技が、この作品のドラマとしてのクオリティを押し上げていた。
まず、第1話からメインキャストとして取り上げられていた神崎拓斗(奥平大兼)、富永蒼(蒔田彩珠)、次元賢太(窪塚愛流)の3人。御上の言葉によって、自身が校内新聞で表してきた報道姿勢が揺らぎ、戸惑う神崎の様子は、第1話の見どころであったし、常に俯瞰し、他の生徒や時に御上までも導くこともあった富永が第9話で見せた涙の求心力は凄まじく、また、誰よりも的確に情報を集めながらも、自分が直接、見たもの、聴いたことを最優先に行動する次元には、人としてのあるべき姿を感じた。奥平も蒔田も窪塚も、すでに様々な映画やドラマで活躍している俳優であるが、本作でも役の事情にとことん寄り添い、難役を丁寧に演じてみせた。

また、第3話と第4話で父親の自主退職と教科書検定の関係に向き合った東雲温を演じた上坂樹里、第5話で父親のリストラとリーマンショックについて語った冬木竜一郎を演じた山下幸輝、第7話で生理の貧困と不当な退学について痛切な思いを語った椎葉春乃を演じた吉柳咲良など、自身の事情と向き合い、御上からの学びを糧に社会に一石を投じようと行動する姿を、生徒を演じる俳優たちそれぞれが誠実に演じていた。『御上先生』は、その他にも書き切れないほど多くの、これからが楽しみな俳優に出会えたドラマでもあった。