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画期的な学園ドラマ『御上先生』は理不尽な社会そのものを描く

2025.3.23

#MOVIE

©TBS
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「先生」と「宏太の弟」の二面性を巧みに表現する松坂桃李

「官僚教師」である御上を体現し続けてきた松坂桃李©TBS
「官僚教師」である御上を体現し続けてきた松坂桃李©TBS

御上の過去や目的が明らかになってきた中で実感するのは、御上を演じる松坂桃李の高い演技力だ。松坂本人の持つ威圧感のないナチュラルな佇まい、本作での柔らかく響きながらも抑揚のない口調などが、「官僚教師」である御上に、人間としてのリアリティをもたらしている。

第5話までは、生徒の前で高圧的な先生として存在していた御上が、第6話で初めて心の柔らかい部分を開示した。教室の後ろに見えた宏太の亡霊に息を飲みつつ、淡々と過去を語りながらも、噛み締めて大切に一つ一つを言葉にしていく姿。生徒たちに語りかけつつも、それは同時に宏太への懺悔のようにも見えた。

教室の後ろに見えた宏太の亡霊に息を飲みつつ生徒に語りかける御上©TBS
教室の後ろに見えた宏太の亡霊に息を飲みつつ生徒に語りかける御上©TBS

そして、御上が最も感情の揺らぎを見せるのは、母・苑子の前だ。第9話では、宏太が亡くなって以降、御上のことを「宏太」と呼ぶ母に初めて正面から向き合った。宏太が死んだこと、自分は弟の孝であること、自分自身抱える宏太への罪の意識。深く息を吸って、感情の昂りを抑えながら語りかける表情と、母へ理解を促す御上の切実で穏やかな声色。先生としての御上と、暗い過去を持つ宏太の弟としての御上の二面性の表現も含めて、松坂にしかできない役柄と言える。

松坂と『御上先生』の脚本家である詩森ろばとは、映画『新聞記者』(2019年)以来のタッグ。詩森が表現する社会性の強いセリフを体現できる俳優の1人と言えるだろう。松坂は、『新聞記者』で第43回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞し、『御上先生』で日曜劇場の主演、2027年には大河ドラマ『逆賊の幕臣』で主演を務めることが発表されている。今後も、さらに磨かれた演技力が堪能できることだろう。

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