マーライオンは自分の伝えたいことを真っすぐに歌える、実直で人懐っこくて多作なシンガーソングライターだ。いや、5年以上変わらぬペースでPodcastを更新し続けているおしゃべりに長けたエンターテイナーでもあり、常にアートワークやグッズにまで自身の好みやこだわりを追及するし、周囲の人を巻き込みながら企画やイベントを次々実現していくマルチアーティストの側面もある。
「にやにやして聴いてもらう」をテーマに2009年活動開始。今年15周年を迎えた彼のキャリアは、旺盛な創作意欲と行動力と、とにかく人を楽しませたいという気持ちによって積み重ねられたものだ。2024年5月に発表された6枚目のフルアルバム『ごきげん』は、今まで出会った人たちに支えられながら、バンドサウンドとしては初のセルフプロデュースで制作した作品。彼なりのど真ん中のポップスを目指した、総決算的作品であり、これから出会うリスナーに向けた入門盤でもある。
この機会にお届けするインタビューもアルバムにあわせて主題はマーライオン入門編とすることにした。15周年のキャリアを踏まえながら、アルバム以外にも三浦康嗣(□□□)参加の7インチリリース、東京・渋谷WWWでのワンマンライブに、HMV record shop渋谷2階でのジャケット / アートワーク展示『ごきげん展』開催と今年彼が仕掛けているモリモリのトピックスの狙いを聞いてみた。私も、彼の音楽と朗らかかつパッション溢れる人柄に巻き込まれた1人なのだ。
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ひなまつり生まれ横浜育ち。シンガーソングライター。NIYANIYA RECORDS主宰。2009年から都内を中心に、ライブ演奏、音楽制作、文筆業、俳優業、ポッドキャストなど、ジャンルの垣根を越えながら活動中。これまでにdiskunion/DIW内レーベルMY BEST!、曽我部恵一が主宰するROSE RECORDS、自主レーベルNIYANIYA RECORDSから計12枚アルバム作品を発表している。2024年5月22日(水)には最新フルアルバム「ごきげん」(2024)を配信リリース。6月12日(水)には三浦康嗣(□□□)Remixを収録した「海へ海へ海へ」7インチレコードが発売。6月15日(土)から6月30日(日)までHMV record shop Shibuya 2階 Bankrobber LABOにて参加作家17名によるジャケット・アートワーク展「ごきげん展」、6月27日(木)には活動15周年を記念した渋谷WWW・ワンマンショーを開催予定。
マーライオンのこれまでをさくっと振り返り
ー15周年を迎えますが、これまでのキャリアを振り返って今のマーライオンは何段階目のフェーズだと思いますか?
マーライオン:第4期です。マーライオンという名前で活動を始めた16歳から、2011年に高校を卒業するまでが第1期。当時は今回のアルバムにも参加していただいたヒロヒサカトーさん(井乃頭蓄音団)をはじめ、atagiさん(Awecome City Club)や、クリープハイプの尾崎世界観さん、長谷川カオナシさんとか、後にどんどん売れていく方々とも出会って、とにかくたくさん刺激を受けていました。の子さん(神聖かまってちゃん)には2ndアルバム『日常』(2012年)の帯コメントも書いてもらったんです。音楽性としては、歌も楽器もヘタなまま、よくわからない衝動でとにかく叫んでいた時期でした。
ー当時からずっとマーライオンとしてやっていこうと考えていたんですか?
マーライオン:いや、考えていませんし、名前を変えたいと思ったことは何度もあります(笑)。でも高校を卒業しても続けようと思ったきっかけはあって、当時『SCHOOL OF LOCK!』(TOKYO FM)がやっていたオーディションの『閃光ライオット』に応募したんですよ。2次審査くらいで落ちちゃったんですけど、ラジオで曲が流れたんです。そのあとYahoo!知恵袋に「先月の何時何分に『SCHOOL OF LOCK!』でかかっていた曲が忘れられない。こういうことを歌っていてすごくよかったけど誰の曲かわからない」って内容が書いてあって、間違いなく僕の曲でした。1人でも刺さった人がいたんだと嬉しかったですね。

ーいい話ですね……。続く第2期はどんな期間でしょうか?
マーライオン:そんなこともあって覚悟を決めて音楽活動を始めた時期です。ライブ盤の『19才』(2013年)を作ったり、下北沢にあったColored Jam(現Music Bar rpm)で2か月に1度主催イベントを始めたり。このイベントには澤部渡さん(スカート)や、柴田聡子さんにも出演していただきました。
ー『19才』は今年4月にリマスターして再リリースしましたね。10代の粗削りなマーライオンのライブが収められていますが、このタイミングで改めて出そうと思ったのは何故ですか?
マーライオン:曽我部恵一さんが当時褒めてくれて共同レコ発イベントをやろうと誘ってくれたり、あそこから色んな人に聴いてもらって活動が広がった、実はすごく大事な作品なんです。だから15周年を機にまた聴いてもらいたいなと思いました。
ーその後2014年11月~2015年1月に『吐いたぶんだけ強くなる』『ボーイミーツガール』『マーtodaライtodaオォォォン!!!』と3か月連続のアルバムリリースもありました。
マーライオン:これも第2期という感覚です。考えられない速さで作っていましたね。tofubeatsさんが前年に1stアルバム『lost decade』(2013年)を大学の卒業制作みたいな感じで発表していたので、そこに習って僕も大学を卒業するタイミングで完成させました。
ーとんでもない創作意欲ですよね……。
マーライオン:その反動か、1~2年はスランプに陥って曲ができなくなってしまって……。
普段は仕事をしながら、音楽活動をやるという今のライフスタイルに入った2015年4月からが第3期です。その後なんとかスランプを抜け出して『ばらアイス』(2018年)が出来た。この頃からようやく「叫び」ではなくちゃんと音楽を作ろうという意識も出てきました。
ー私が初めてマーライオンの音楽に出会ったのもこの『ばらアイス』です。実直でかわいい曲を歌う人だなという印象でした。そして最新の第4期は?
マーライオン:2019年からコロナ禍を経て現在に至るまでです。音楽に限らず、自分に向いていることがわかってきたんですよね。まず今も続けているPodcast『マーライオンのにやにやRadio』を2019年5月に始めました。グッズに関わる仕事を始めたのもこの時期。自分が考える企画で人が喜んでくれることが好きだし、行動や成果も伴ってきて、水を得た魚のように仕事も励めるようになりました。

ーPodcastはこの取材日の時点で380回更新されていますが、向いていると思ったのはなぜですか?
マーライオン:16歳でライブを始めてからずっと、その場にいるお客さんを楽しませるぞっていう気合だけは人一倍強くて、MCで必死に喋っていました。だから1人喋りが自分を伝えられる一番得意な方法だったんですよね。また直後にコロナ禍でライブができない期間が来たので、その間もおしゃべりの力を衰えさせるわけにはいかない! という気持ちもありました。