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悪意を感じる秀逸なカメラワーク
本作は、いい意味で悪意すら感じる巧みな演出が光る。たとえば、オープニングは4:3という正方形に近いアスペクト比の画面から始まり、まるでホームビデオで撮られた映像に見える。そのため、そこにいる少女が全身を見ているはずのロングレッグスを、観客は「膝から鼻までしか見られない」というもどかしさを味わうことになる。それ以外の場面でも、奇抜でありがらシャープなカメラワークや編集の連続で、「見えていない部分を想像する」ことが恐怖を増幅させる効果を生んでいる。

さらに、終盤にはネタバレ厳禁の衝撃的な展開も用意されている。日本でも馴染みのあるT. REXのとあるヒット曲をフィーチャーした「仕掛け」も、なんとも意地が悪い(褒めている)、もしくは「偏愛」を感じる場面かもしれない。前述したように連想する作品が多い一方で、観客の安易な予想を覆す、ホラー映画の定石をあえて外していく作りにもなっていると言ってもいい。
ただ、好みが分かれる要素として、全編でリアリスティックなサスペンスというわけではなく、超自然的あるいは「オカルト」ともいえる要素がある点が挙げられる。不条理な展開はもちろん意図的なものであり、それが本作の大きな魅力でもある。反面、「そんなことになるわけないだろ!」とツッコんでしまうと、一気に冷めてしまうかもしれない。

結論としては、やはり「変な映画」ではあるのだが、その奇妙さこそが本作の醍醐味だ。「簡潔な殺傷・流血・肉体損壊、及び年少者の死体の描写がみられる」という理由でPG12指定となっているし、不快感や嫌悪感を呼び起こす描写もあるため、万人におすすめとはお世辞にも言えない。しかし、前述してきた映画が好きな人にとっては「ハマる」作品であることは間違いない。ぜひ、劇場という逃げられない場所で、悪夢のような映画体験をしてほしい。

映画『ロングレッグス』

2025年3月14日(金)全国公開
監督・脚本:オズグッド・パーキンス
出演:マイカ・モンロー、ニコラス・ケイジ、ブレア・アンダーウッド、アリシア・ウィット
2023年/アメリカ/英語/101分/シネスコ/カラー/5.1ch/原題:LONGLEGS/日本語字幕:牧野琴子 PG12
配給:松竹
公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/longlegs/