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表現者としての共通点は、人を喜ばせたいという想い
ー実際に、スキルトレードをしてみて何を感じましたか。
八幡:粉川さんは音楽文脈でドラムを表現の手段にしていて、私はずっと芸術っていう文脈の中で映像をやっていて。他分野で全然違うことをやってるように見えるのに、同じことをやってるみたいな感覚になるときがある。
粉川:アートに対しての真剣さから同じ熱量を感じる人ってなかなかいないんですよね。僕は、全てのものを見る判断基準が「どれだけこだわっているのか」ということだけなんです。彼女は、一挙手一投足、もう脚立を立てるその様からこだわりが出るんですよ。
例えば料理で言ったら京都の近又さんみたいな。超一流の料亭にご飯を食べに行くと、何かを表現するって、人を感動させるってやっぱりこういうことですよねって改めて感じます。

八幡:同じ作家同士でも、一緒に話しながら、さらに細部にいける感じがある人って多くはないと思うんです。喋っていると、表面には見えていないようなこだわりの所の話になりますよね。
粉川:ずっとその誰にも見えないようなこだわりに対して努力をしているよね。
八幡:粉川さんとは、今はまだ見えてないところまで、行けるかもしれないという感覚を持てるときがあります。この前一緒に京都芸術センターでライブパフォーマンスをやった時の、観客からもらったリアクションとか踏まえても、その片鱗に触れられたのではないかという気がしました。そういったことを言葉で喋るだけじゃなくて、作品として具体化していけるのもすごい喜びですよね。具体化して他者からフィードバックをもらえるから、つくる喜びや意義を感じられる。
ザ・トライアングル「八幡亜樹:ベシュバルマクと呼ばないで//2022」The Triangle Yahata Aki: Don’t Call it Beshbarmak, 2022
粉川:八幡さんとは創る喜びと、アウトプットする喜びの感覚が一緒というか……。自己満足で終わるアーティストも多いじゃないですか。そうではなく、社会に投下して、それがどう影響して、相互作用するかまでちゃんと見えてる人って、少ないんじゃないかなって。
粉川:やっぱり「人のためになりたい」というのがものづくりの根底にあると思うんですよ。観客のためにつくっている部分と自己満足のためにつくる部分、このバランスがアーティストによって違う。八幡さんとはそのバランスが似てるから面白い。
八幡:そうですよね。私も常に観客を想定して作品をつくっている。
