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ひきこもりから脱したハイバイ岩井秀人 演劇による精神看護の可能性を医療従事者と語る

2024.12.18

#STAGE

演じることで、過去を他者の視点で見つめ直す

ー岩井さんは実際に『ワレモロ』のワークショップをやってみて、印象に残っていることはありますか?

岩井:参加者がそれぞれまず自分の体験を話すんですけど、自転車に乗っていたらバスと衝突してしまった人の話が印象的でした。バスの運転手さんが「警察に来てもらわなくちゃいけないから、お客さん全員降りてください」って乗客を降ろしたら、血まみれの自分に誰一人、同情する感じもなく、降りながら無言で自分を見ていたらしくて、それでその人は傷ついたという話で。

それを劇にして、無表情な乗客役をしていた人に「どういう気持ちだったの?」と聞いたら、「意外と平気そうだと思って見てた」と言ってて。それで話し合っているうちに、例えばその時に、むちゃくちゃ痛がって叫びまくっていたらどうだったんだろう、という話になったんです。本人は「いや、私それできないんですよ」と言っていたけど、試しにやってみたら、乗客役の人たちがみんな助けに行ったんですよ。本人は、助けを呼ぶという考えがそもそもなかったらしくて、めちゃくちゃ驚いてました。その時に、その人の過去の意味がガチャンって変わったと思ったんですよね。「みんなが私を責めてたわけじゃなくて、私の状態を知らなくて探ってただけだったんだ。」って。

中島:そういうことが頻発しますよね。

岩井:そうなんです。だからこういうワークショップはやった方がいいんだろうなと思いますね。

―演じることで、過去を他者の視点で見つめ直せるんですね。

岩井:ただ、わざわざ演劇でやらなくてもいいかもしれないとは何回も思ったことがあって。演劇は別に過去をもう1回見るためのものとも限らないし、「当事者研究」も、別に過去をもう1回見たり、演じたりする必要が本当にあるんだろうか、みたいなことを考えたことがあったんですよね。

ーそれは、演じないで話をするだけでも、良くなっていくのでは、ということでしょうか?

岩井:はい。もちろんそういうこともあると思うんです。でもやっぱり、「あなたの過去や、あなたに起きていることをみんなでなんとかしますよ」という姿勢が全面に出てしまうと、良くならなくちゃいけないというプレッシャーが生まれてしまう。治す者、治される者の関係というのは結構きついという感覚がありませんか?

中島:そうだと思います。劇にすると、一緒にやるみんながそれぞれ「誰かを治す」ではなく、「演じる」という別の目的に向かえるのがいいんだと思います。

岩井:結構大胆に演技してくれるんですよね(笑)。

ワークショップの様子(中島提供)

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