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「『世界の隠れたもの』に興味がある」(ズヴォリンスキー)
この作品の背景や込められた想いについて、作者のレオニード・ズヴォリンスキーに尋ねてみた。

作曲家、ニューメディアアーティスト。モスクワ音楽院作曲科首席卒業、リトフンチンテレビ・ラジオ大学音響映像芸術サウンドプロデュース科修了。現在、東京藝術大学大学院音楽研究科(音楽音響創造)在学中。Max、Arduinoなどの様々なアルゴリズムやシステムを取り入れた現代音楽やニューメディアアートに取り組むとともに、人の聴覚特性や音の錯覚効果と芸術への応用に関する研究を行なっている。
子供の頃から音楽教育を受け、5歳くらいから自分の音楽をつくっていたというズヴォリンスキー。母国ロシアで作曲やサウンドエンジニアリングを学んだのち、7年前に来日した。その頃から、次第にメディアアートや、インタラクティブ技術を使った芸術にも興味を持つようになったという。ちなみに、通訳なしでインタビューに答えてもらえるくらい日本語が堪能である。
—音にまつわるメディアアートに取り組んでいらっしゃると伺いました。アーティストとしてどんなことに関心があり、これまでどんな作品を作ってこられたか、簡単に教えていただけますか?
ズヴォリンスキー: 「情報の伝達」と「記憶」というテーマに興味があります。記憶というものは常に同じではなくて、何か大事なことを思い出すとき、人間はその度に上書きして新しい記憶をつくり出しているようなんです。
—人の頭って、結構いいかげんなんですね……。
ズヴォリンスキー: そう(笑)。認知科学の研究について調べるうちにそれを知って、非常にびっくりして。そこから自分なりに色々考えて、5年ほど前の『X-SynapseL』という作品が生まれました。人間が音や音楽を聴くときには、知覚した物理的な信号を、脳内で音のイメージへと変換して認知していますよね。しかし、そこには錯覚のような、「ズレ」があるみたいなんです。
—興味深いです!
ズヴォリンスキー: そうした聴覚の特性は、いわば「世界の隠れたもの」です。ファンタジーじゃなくて実際に、世界には非常に不思議で面白い「隠れたもの」が多くあります。そういうことに興味があり、作品として提示していきたいと思っています。
