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地域の文化発信×アーティスト支援。アーツカウンシルさいたまの取り組み
この土地と盆栽の関係は分かった。それではどうして、盆栽とデジタルアートなのだろうか?
冒頭で紹介した展示は、アーツカウンシルさいたまが実施するプロジェクト、その名も「空想するさいたま」の一環である。
「空想するさいたま」は、さいたま市の4つのチャームポイント「盆栽」「漫画」「人形」「鉄道」をテーマとしたデジタルアートを、令和5年度に東京藝術大学キュレーション教育研究センターと協働して一般公募し、魅力的な作品・プランを選出、それをアーツカウンシルさいたまの伴走支援のもとで実現させるというものだ。さいたま市にとっては魅力を発信する新しい手段であるし、アーティストにとっては行政の支援のもとで作品制作できるチャンス。それぞれが独自の厚みと奥行きをもった4つの文化資源について、その本質を見つめ、伝えようと形にするのは、双方にとってとても刺激的なことであるはずだ。

この企画が面白いのは、それぞれ歴史を持つ4つの文化を、あえて「◯◯×デジタル」の切り口で再解釈する、というポイントだ。盆栽は特にイメージしやすいが、地域が誇る文化資源の愛好者には比較的年配の人が多い。それをデジタルと掛け合わせることで、若い世代にぜひとも届いてほしい、進化を続けているカルチャーに注目してほしい、というアーツカウンシルさいたまのパッションがそこには滲んでいる。
レオニード・ズヴォリンスキーによる『Sleeping Memory』は、その「想像するさいたま」プロジェクトの記念すべき作品第1弾だ。盆栽村のコミュニティハウス「盆栽四季の家」の和室がデジタルアートの展示室となっていたのには、そういうわけがあったのである。