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映画に人柄が表れる。お互いの作品から見る、2人の様相
―一緒に映画作りもされたお二人は、それぞれ、相手をどういう人だと思いますか?
太田:僕が現場で一番いいなと思ったのは、五十嵐さんは本当によく食べてよく寝るってことですね。
五十嵐:(笑)。

太田:撮影中も、スタッフ、キャストの中で一番最初に寝るんです。自分は、撮影が終わった後は毎回、「明日の撮影どうしよう」って夜遅くまで悩むことが多いんですけど、五十嵐さんは「現場見ないとわかんないよ」ってごはん食べたらすぐに寝てた。それで朝は早く起きて、海が見えるウッドテラスであぐらをかいて脚本を読んでた。それがまた気持ちよさそうで、ああこれでいいんだって、見ていて衝撃でした。
五十嵐:撮影期間は、単純に疲れちゃうんですよ。僕の場合、毎回しっかりプランは練るけど、それを段取り通りに進めていくやりかたはしていなくて、その都度「ここはどうしよう、あれはどうなるかな」と考えながら撮影していくから、夜はへとへとになっちゃう。そうなったらもう何も考えられないから、夜は早めに寝て、早起きして散歩しながら考えたほうがいいかなって。
太田:疲れてるときは何も考えられないよ、っていうのは、映画作りに限らず、すべてにおいて勉強になりました。

―そういう五十嵐さんのありかたは、作品にも出ていたと思いますか?
太田:成立させるために無茶しているわけでもないし、なぜだか自然と撮影現場で良いアイデアが生まれる。そういったクールさは作品にも出ていたんじゃないでしょうか。
五十嵐:僕から見た太田君は「これってどう思う?」と聞くと、だいたい最初は「うーーん」って言ったまま答えない(笑)。きっとあらゆることに関して先入観がないんだと思うんですよね。だから何に対しても、その都度じっくり考える。それでしばらくして「これってこうなんじゃないですかね」って言い出したら、そのあとは絶対にその考えを曲げない。素直さと頑固さが同時にあるのが太田君なのかな。
『石がある』は完全にそういう映画だなと思う。映画を撮ってる人間としては、「2人の人物が出会って川を歩くだけ」の話をどう成立させるんだろうってつい疑問を抱いちゃうんだけど、「映画とは、こういうもの」「こういう物語を作らないといけない」って先入観が太田くんには全然ない。そのまっすぐさはすごいなって思う。