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悩みや不安を抱えながらも「楽しい」を第一に
ーそれぞれ動機にグラデーションがありつつも、「惚てってるズ」という場が生まれた理由が少しずつわかってきました。
金子:本当に、結成段階では何をやるのか全く決まっていなかったんです。3人ともふざけることは好きだったのですが、それをどう行動に起こすかというのが、すごく難しくて。
前原:結成してから3年ぐらいは、ずっと「何をやろうか」と話している状態でしたね。YouTubeやろうか、ラジオやろうか、って色々考えて。
ーそこから今の形に辿り着くにはどんな経緯があったのでしょう。
前原:これは個人的な話になってしまうんですけど、一気に演劇に舵を切った日がありました。ナカゴーという劇団を主宰していた鎌田(順也)さんという、本当に面白い劇作家さんが2023年の夏に亡くなられてしまって。町田でそのお葬式に出席した帰りに、鎌田さんのことを思い出しながら、周囲の人に「僕もいつか面白い舞台を作りたいんです」って話をしていたんです。
そうしたらその場にいたユーロライブの小西さんというスタッフの方が「じゃあうちでやりましょうよ」と声をかけてくれて。目の前にいた桃尻犬の野田(慈伸)さんとテニスコートの神谷(圭介)さんにも「一緒にやってくれませんか」と頼んだら、もちろんいいよと快諾してくださったんです。それですぐ2人に「来年4月ぐらいに公演をやろう」と連絡しました。

ーお2人はその知らせを聞いて、いかがでしたか。
金子:前原くんが選んでくれた演出家なら面白いだろうなという信頼はありました。結果的にも大正解でしたが、当初はどうなるかが全く見えない部分もありましたね。自分たちが面白いと思う表現をやって、本当に通用するのか自信がなかったので。
三村:僕も、本番を迎えるまでは毎回稽古で悩みましたし、きついな、と思うこともありました。コントで滑るのはすごく怖いし、自分たちで公演を作る大変さも色々あったし。けど、初回の公演が終わる頃には、またすぐにやりたいという気持ちになっていましたね。
金子:この畳の部屋で、演出家の方と4人だけで稽古していると、何か動きをやったとしても、シーンとなるから怖いんです(笑)。
前原:それで言うと僕も、最初は不安がありました。金子くんはノリの人だから、いざ稽古を入れたら、来てくれないんじゃないかって思ってて(笑)。

金子:人の演技にダメ出しして稽古に来ないって、クズ人間じゃん。最悪な印象だ!
前原:って思ってたんですけど! 実際はスケジュールの連絡もすぐに返してくれるし、めちゃくちゃ真面目に取り組んでくれて。
金子:第1回公演の時なんて、俺の方が「もっと稽古増やそう」って言ってたくらいでしたよ。「これじゃまだ足りない」ってカズのこと呼んで2人で練習して。
三村:確かにそういう時間はありました。
前原:でも、一方でできるだけ緩やかにいたいような部分もあって。演劇の稽古って、本来1ヶ月前からびっしり稽古する、という感じなんですけど。それぞれ仕事もあったし、とにかく楽しいことが第一なので、4月末の公演に向けて、1月ぐらいから「来週空いてるんだったら稽古しようよ」というようなノリで、週1、2とかで緩やかに集まっていました。
とにかく、あまり「仕事」になりすぎないよう、スケジュールが抑えられている、という感覚を持たれないように公演準備ができたことは、自分としてはすごく大きかったです。