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ヒントは江戸時代の仏師、「円空」の逸話
金子:まさに、この映画の舞台である岐阜県の長良川のあたりの出身の仏師です。彼は子どもの頃、長良川の洪水で亡くしてしまった母親の魂を鎮めるために、日本中を旅しながら、膨大な数の仏像を彫った人物なんです。実際、長良川流域のあちこちに、彼の逸話がたくさん残っていて……それが1600年代の話なんですけど、この映画に登場する紙芝居の中の世界というのは、実は円空が生きていた頃という設定なんですよね。

―あ、そういうことだったんですね。
金子:はい。この映画は『長良川 スタンドバイミー 一九五〇』という原作小説があって、原作者の了解のもと、ほとんどオリジナルと言っていいぐらい自由に脚本世界を広げたんですけど、その原作は作者の方の思い出がベースになっている私小説なんです。そういった話をさせていただいたときに高木さんが「すべての表現は私小説だと思う」とおっしゃって。音楽でも映画でも、すべては私小説だと自分は思っているけど、この映画は金子さんにとって、どういう物語なんですかと。かなり直球の質問が、いきなりきて(笑)。
―そうですね(笑)。
金子:そこで、僕のほうから2つお話をさせてもらったんです。ひとつは、円空の人生についての話です。僕はもともと円空に興味があったんですけど、たまたま今回、長良川で映画を撮ることになったときに、やっぱり円空の逸話が、この地域にはすごく多いなっていうのを改めて感じて。映画の中に「木地屋」という、各地を旅して回る木工職人の集団が出てきますけど、円空の父親は、木地屋だったという説もあって。そういったところから、今回の物語を発想していきました。
