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「New Bohemia Signs」に弟子入りするために、単身渡米
中原:まさにその通りです。そこで、筆で書くということに興味を持ちました。筆でアルファベットを書きたいと思っていたところ、本屋さんで『Sign Painters』というアメリカの看板職人の映画に関する本を見つけたんです。そこに書かれていた文字を見た瞬間に、「めちゃくちゃかっこいい! これだ!」と衝撃が走りました。これがサインペインターを志したきっかけです。その『Sign Painters』という本の中には、20人くらいのアメリカのサインペインターが載っていたんですが、その中で自分が好きだなと思うペインターのインタビューを英語で頑張って読んでいたんです。
Celeina:好きって強いですね。
中原:本当にそうですよ。サンフランシスコにある「New Bohemia Signs」というサインショップのボスのインタビューも載っていたんですが、ボスが描くサインがとても格好良かったんです。僕がすごくかっこいいと思う秘密がきっとあるはずだ、この人に教えて欲しい、と思ってGoogleマップで調べたところ、本当にその店があるんですよ。なので、そのままお店に1番近いホステルを探して、ESTAで90日間のビザを取った時にかかる滞在費用も計算して、夜勤してお金を貯めて、そのお店に手紙を送ったんです。
タカノ:まだ向こうには何も連絡を入れていないですもんね。その段階で、計画を立ててお金を貯めて、と。それで、お手紙。
中原:カナダ人のアンドリーという友達に相談したら、メールだと簡単に送れてしまうので、手紙の方がいいんじゃないかと言われたんです。
Celeina:手書きの手紙の方がグッとくるということですよね。でもちゃんと届いているか不安になりそうです。
中原:EMSだと追跡できるので、お店に届いているかを確認できるんです。手紙に、自分が練習した紙も一緒に入れていたんですが、向こうに着いたタイミングで、また別の角度からアプローチしようと熱烈なメールを送りました。
タカノ:アナログとデジタルを駆使して送ったんですね。
中原:手紙で返信って無理じゃないですか。でもメールだったら返信がしやすいだろうと思って、もうまるでラブレターのように送ったんです。店に行く日程もメールに書いていたので、OKでもダメでも返事が来ると思っていたんですけど、一向に返事が来ない。飛行機やホステルの予約を取るべきなのか悩んで、コロンビアに5年住んでいたバックパッカーの友達に相談したんです。すると、その友達に「アホじゃないのか」と言われて。「パッションが大事なんだ」と。「そのパッションをいつ見てもらうのよ、そいつに会った時じゃん!」と言われたんです。メールや手紙をいくら送っても無駄で、さっさと行ったほうがいいとアドバイスしてもらいました。
タカノ:その友達もすごいですね。
中原:そうなんですよ。そして忘れられないのが、その友達と飲み屋を出て別れた後、しばらく経ってから「あのさ、もし駄目だったとしても最高の旅になるから!」と言われたんです。
Celeina:いいですね、その一押し。
タカノ:映画のワンシーンみたいな瞬間ですね。
Celeina:そして、晴れて「New Bohemia Signs」に行って弟子入りもされたということで。
中原:いい人たちで、本当にラッキーでした。レジュメといって、自分の履歴書を全部1本のペンで書いて、「このペン1本で書きました!」とそのペンを添えて渡して、受け入れてもらえました。