グータッチでつなぐ友達の輪! ラジオ番組『GRAND MARQUEE』のコーナー「FIST BUMP」は、東京で生きる、東京を楽しむ人たちがリレー形式で登場します。
2月20日は、壁に合うファッションを追求した壁愛好家の猪熊夏子さんからの紹介で、起業家でクリエイターの渡部薫さんが登場。インターネット黎明期から検索エンジンの開発などに携わり、現在は観光にAIを活用するサービスを展開。渡部さんが思い描く、人間とAIが共存していく未来の姿についてお話を伺いました。
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インターネット黎明期、検索エンジンの土台づくりに携わる
Celeina(MC):まずは、プロフィールからご紹介させていただきます。インターネット黎明期よりインターネット事業に携わり、ベンチャー企業の立ち上げ、経営、ビジネス開発、事業戦略を担当。ソフトバンクグループでは、Yahoo! JAPANの動画検索エンジンの開発及びモバイル検索エンジンの開発を主導し、ボーダフォンの買収案件に関わられました。他にもSBIグループでの事業やNASAのエンジニアとの共同開発、マイクロソフトに2000億円で買収されたノルウェーのFAST社とジョイント・ベンチャーの設立など、海外企業との取り組みも得意とされています。
タカノ(MC):すごいご経歴ですね。もともとは開発エンジニアとしてインターネット事業に携われていたんですか?
渡部:もともとはエンジニアです。今はどちらかというと、事業設計などが得意です。
Celeina:そもそも、インターネット事業に携わられたきっかけは何だったんでしょうか?
渡部:運がよかったんです。約30年前、まだインターネットが世の中に広がる前に、コンピューターに馴染みがありました。ほとんどの人は、コンピューターがインターネットに繋がるということを知らなかった時代です。ワーキングホリデーでたまたまオーストラリアに1年間ほどいたのですが、当時は、国際電話をすると1分200円もしたんですよ。携帯電話自体もすごく高価でした。自分もまだ若かったので、そこにお金をかけられなくて、コミュニケーションの手段としてインターネットを使っていました。
1995年頃、香港からお金持ちの中国人がお子さんをバンクーバーやシドニーに逃がしていて、その方たちは日本製品が大好きだったんです。でも向こうで日本製品を買うと、価格が2倍以上するので、その方たちに向けて、PlayStationなどの輸入代行をやっていました。今でいうeコマースの走りみたいなことを、電子メールを使ってやっていました。それがきっかけで、インターネットってすごいんじゃない? と思ったことが始まりです
タカノ:そのあと、ソフトバンクで検索エンジンの開発を主導されたんですか?
渡部:はい。日本に戻ってきてからは、インターネットに詳しかったので、ソフトバンクやNECなどに、メールを送りまくって、拾ってくれたのがソフトバンクでした。それがきっかけで、NASAの元エンジニアと一緒に会社を作った時に、ソフトバンクが 20億円ぐらい出資してくれましたね。もともと情報検索が僕の専門だったので、今でいうとgoogleが検索エンジンでやっているようなことを、得意としていました。
タカノ:そのテクノロジーを現在、我々が使っているので、間接的に渡部さんにお世話になっていたんですね。
渡部:歴史的に見れば、最初になった土台を作り上げていった世代になります。
Celeina:日本に戻ってきて、各所にメールをたくさん送られて、ソフトバンクに拾っていただいたというお話がありましたが、渡部さんがしたいことを企業へ発信していたんですか?
渡部:そうですね。今は、XやInstagramのダイレクトメッセージで色んな有名人と繋がれるじゃないですか。昔の企業はメールアドレスを持つと、大体インフォの連絡先を持つんですよ。 だから、info@ソフトバンク、info@富士通、info@NEC宛に、レポートを勝手に送ると、「もっと詳しく話を聞きたい」と連絡をいただきました。当時はそういうインターネットに詳しい人材がいなかったんですよね。
タカノ:そのドメインのハックの仕方も渡部さんらしいですね。
渡部:今はブラウザっていうとみんなChromeなどを使っていますが、Internet Explorerが出る前の話で、Netscapeというブラウザを作った会社があったんですよ。結局NetscapeはMicrosoftに潰されて、AOLに買収されてしまうんですけど。そのNetscapeというドメインを僕はずっと狙っていたんですが、10年ぐらい経たないと権利を放棄してくれないんです。今、Netscapeのドメインは僕が持っています。
Celeina:そうなんですか?
渡部:Netscape社がその権利を手放した時、すかさずそのドメインを取りました。だから、今は自分のアドレスとして使っています。ファッションで言うと、ルイ・ヴィトンをドメインにしているような感じですね。
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観光や司法分野にAIを導入し、人間との良い共存を目指す
タカノ:渡部さんは今、AIを観光に活用されているそうですが、どういうことなんでしょうか?
渡部:今はChatGPTなどで、AIが自動的に言葉を組み合わせて話せるようになっていますよね。テクノロジーが進化すると、必ずいい方向と悪い方向の2つが出てくるんです。先に悪い方向を言うと、エッチな言葉や暴力的な言葉をAIに喋らせたり、ディープフェイクが出てくる。では、いい言葉というのはどんなものかと聞かれた時に、AIにはこんないいことができると証明しないといけないわけです。そうすると、観光案内として話す内容だったら、悪いことは喋らないじゃないですか。
さらにAIは何がいいかというと、1つの言語が話せると、多言語に展開できるという強みがあるんですよ。他言語を必要とするインバウンドの方が、日本の文化や歴史とか知りたくても、観光ガイドがすぐに見つかるわけではないじゃないですか。AIが、街を歩いていると自動的に周辺の観光ガイドをしたら、AIが持つポテンシャルを多くの方に知ってもらえて、いいデモンストレーションになるかなと思いつきました。
タカノ:それはとてもいいですね。その機能はもう利用できるんですか?
渡部:今、プロトタイプとして利用できる状態になっています。HARUKA.AIと打てば、サンプルのAIが出てきます。
タカノ:皆さん、ぜひチェックしてみてください。
Celeina:他に渡部さんが考えられている、AIの活用方法はありますか?
渡部:無限にありますが、僕が本当にやりたいのは司法AIです。AIのいいところのもう1つは、感情が入らないことです。合理的に考えられるので、裁判で人の良し悪しを、AIに判断してもらうことができます。人間の裁判官はとても重要ですが、どうしても感情が入るので、AIがどのように判断したかを1つの参考にしてもらえるんじゃないかなと。それだけでなく、裁判は2割司法と言って、8割の人が諦めて裁判をやりません。弁護士費用を理由に泣き寝入りをして捨てられてしまった訴訟をAIの力で助けてあげられるんじゃないかなと考えています。
さらに重要な問題として、裁判所では裁判官が朝から晩まで、過払い金や離婚調停といった裁判も全部やっています。志高く法学部へ行って裁判官になった日本の優秀な人材が、過払い金などの訴訟を朝から晩までやっていると、志も折れてしまうんじゃないかなと思います。だから、そういった訴訟は全部AIにやらせて、人間には人間にしかできない事件を扱ってほしいという思いもあります。そういう形で、AIをうまく活用してもらいたいですね。
Celeina:思いもよらなかった分野でした。渡部さんは適材適所でAIと共存していく未を考えていらっしゃるんですね。
タカノ:では、ここで1曲お届けしましょう。渡部さんにこの時間にラジオでみんなで一緒に聴きたい曲を選んでいただきました。どんな曲でしょうか?
渡部:ゲームが好きなんですが、特に好きなサッカーゲームの『FIFA 22』に入っている、アレス・カーターの“Out Of Lives feat. Charlotte Haining”です。