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土偶を作るモチベーションは根源的な欲望?
タカノ:ここで経験が活きてくるのですね。『土偶を読む』では、土偶は植物や貝がモチーフになっているのではないかという仮説がありましたが、どうでしょうか?
竹倉:今までずっと見落とされていたのですけれども、私の解読結果としては、食べていたものをかたどったものが非常に多いという結果になっています。とりわけ、炭水化物を多く含む植物が主要なモチーフになっています。なぜかというと、人間の脳みそは炭水化物で動く、つまり脳がエンジンだとしたら、ブドウ糖がガソリンにあたります。このブドウ糖というのはデンプンからできていますが、デンプンは植物が光合成で作ります。これが炭水化物ですね。脳のパフォーマンスを上げるためには、ガソリンとなる炭水化物が不可欠です。
また、満腹中枢も血糖値をモニターしているので、炭水化物を食べることでお腹が満たされます。焼肉を食べに行って、ずっと肉だけを食べていても、最後にはお茶漬けとか欲しくなりますよね。肉だけでも十分のようでいて、やはり最後には米とかラーメンなど炭水化物を欲しがるという仕組みも、人間の進化の過程でつくられた傾向だと思います。
タカノ:欲しがっているものを土偶にすることは、好きなものを形にして残したみたいな発想になるのですか?
竹倉:相当インセンティブがないと、わざわざ土偶を作るといった面倒くさいことはしないと思います。だから、モチーフになった植物や貝にはそれなりの価値があることになりますね。分かりやすく言えば、食欲がモチベーションです。
Celeina:現代では、好きなものをフィギュアとして持つと思うのですけれども、縄文人も、我々現代人と同じような感覚なのでしょうか?
竹倉:そうですね。根底に相当強い欲求がないと、面倒くさいものをわざわざ作らないと思います。古代人がコストをかけて作るフィギュアが食べ物の獲得に関係しているのは、それが生命維持に直結するからであると、私は分析しています。
Celeina:すごく面白い。
タカノ:縄文人の皆さんは、土偶とどのように暮らしていたのでしょうか?
竹倉:土偶を持っている人と、持っていない人がいたと思うのですけれども、やっぱり栽培ですね。最近、さらに研究を進めて見えてきたのは、自分たちで植物を栽培する際に、蒔いた種が発芽して、すくすく成長するようにと願うために、呪術やおまじないとして利用していたというシナリオです。現代人が晴れてほしい時に、てるてる坊主を作ったりするのと同じような感覚ですね。
Celeina:お守り的なことでもあるのでしょうか。
竹倉:お守り的なものにも多分転用されていたと思います。
タカノ:よく育ちますようにということなのですね。