メインコンテンツまでスキップ
NEWS EVENT SPECIAL SERIES

問題作『クラブゼロ』監督に訊く 「人はなぜ洗脳されてしまうのか?」

2024.12.5

#MOVIE

私たち人間は知識ではなく、自分の信じていることに突き動かされている

ーエルサ(クセニア・デヴリン)が両親の前で嘔吐し、その吐瀉物をもう1度食べるシーンは、思わず目を覆いたくなるような衝撃がありましたが、隠さずにカメラに収めていました。今回、センシティブなシーンもそのまま撮影したのには何か理由があるのでしょうか。

ジェシカ:この映画自体が、概念や考え方が過激化していくことを描いている映画ですが、それを見せるシーンでもあるからです。一連の流れをカットを割らずに長回しで撮っているのは、そこまでやるんだということを表すためでした。通常の私たちや、それまでのエルサだったらやらないようなことをやるほど過激な状態であることを見せるシーンであると共に、過激になりすぎると自分自身をも傷つけてしまうということを見せる意図もあります。

エルサ

ジェシカ:「食べない」という食の否定がこの映画の大きな一部でもあるわけですが、この行為を続けていけば体は朽ちていき、自傷行為となって、ゆくゆくは死んでしまう。でも初めのうちは、「食べることを否定する」ことは、魅力的で中毒性があることなんじゃないかと思います。自分の体が求めている食べ物を自分であえて否定することで、自分が強いと感じられ、幸福感を覚える。自分へのエンパワーメントになるんですよね。だからこそ依存や中毒に繋がって、摂食障害になっていく。そういった繋がりがあると思っています。

ーエルサが吐瀉物を食べるシーンは、彼女の信念を象徴するようなシーンだと思いました。映画の最後にも「信念が大切」という言葉が出てきますが、この作品においてそれは1つのキーワードになっていますよね。

ジェシカ:信念(faith)は必要だと思います。ただ、何も食べないことを信念とした「クラブゼロ」に入会した子どもたちは、あのまま飢え死にしてしまうか、この世ではない天国のような場所に足を踏み入れていくわけなので、皮肉な終わり方ですよね。ラストシーンで、失踪した子どもの親たちと校長先生が集まって話し合いますが、彼らは子どもたちがなぜ「クラブゼロ」に入会するほどまでに、不食に魅力を感じてめり込んでいったのかを理解できない。それは観客も一緒だと思います。

そういうわからないことに出会った時に、人は何かを信じ始めるのではないかと思っています。「知らないことが信じることであり、信じることは知らないことである」という言葉がありますが、どの社会においても、人間は知識ではなく、自分の信じていることに突き動かされていると思います。私たちは、科学的なことが自分たちの行動のベースになっていると思い込んでいるけれど、実は知識ではなく、自分の脳裏にある信念に突き動かされているんです。

『クラブゼロ』

CLUBZERO_poster_B2_outline

出演:ミア・ワシコウスカ
脚本・監督:ジェシカ・ハウスナー 撮影:マルティン・ゲシュラハト
2023年|オーストリア・イギリス・ドイツ・フランス・デンマーク・カタール|5.1ch|アメリカンビスタ|英語|110分|原題:CLUB ZERO|字幕翻訳:髙橋彩|配給:クロックワークス
Ⓒ COOP99, CLUB ZERO LTD., ESSENTIAL FILMS, PARISIENNE DE PRODUCTION, PALOMA PRODUCTIONS, BRITISH BROADCASTING CORPORATION, ARTE FRANCE CINÉMA 2023

公式サイト:klockworx-v.com/clubzero/
公式X:@clubzeromovie
12月6日(金)より、新宿武蔵野館ほか全国公開

RECOMMEND

NiEW’S PLAYLIST

編集部がオススメする音楽を随時更新中🆕

時代の機微に反応し、新しい選択肢を提示してくれるアーティストを紹介するプレイリスト「NiEW Best Music」。

有名無名やジャンル、国境を問わず、NiEW編集部がオススメする音楽を随時更新しています。

EVENTS