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『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』に描かれた新しいヒーロー像とは

2025.2.22

#MOVIE

新しいキャプテン・アメリカ像

ところで、この映画のもう1つの大きなシンボルは、言うまでもなくアメリカ合衆国大統領である。予告からすでに示されていた通り、ロス大統領はレッドハルクに変貌する。赤が共和党のカラーであるためトランプ大統領を指しているという解釈もSNSなどで散見されるが、作中で描かれる政治的スタンスはどちらかといえば民主党に近い。高齢であることから 、バイデン前大統領もイメージさせる。

レッドハルク(ハリソン・フォード)

いずれにせよ、ロス大統領が赤い怪物へと変化するのは、冒頭の「共生」という価値観が崩れ分断へと至る危機、そしてアメリカの暴力性を表現していると考えられる。しかし、ロス大統領はただの悪役ではなく、変わろうとする意志をもち、怪物にならないように耐えようともしており、揺れ動くアメリカ自体を象徴するキャラクターなのではないだろうか。

本作のキービジュアルには、そのレッドハルクの赤い大きな拳を、盾で受け止めるサムの姿が映し出されている(実際に劇中でも、受け止める姿が数多く登場する)。レッドハルクの攻撃を、盾や羽に覆われるようにして耐えるサムの姿は、これまで述べてきたマイノリティのキャプテン・アメリカとしての重圧や、ドラマシリーズで示された人種偏見を含むアメリカの暴力に、サムが耐えている姿と見なすこともできるだろう。加えて、アフリカ系アメリカ人のキャプテン・アメリカであるサムが、多様でリベラルなアメリカの価値観を守る防波堤のような存在なのだという解釈もできる。そう見立てるならば、サムが力に訴えるのではなく対話による解決を試みる点は非常に重要だ。

(左から)サディアス・ロス(ハリソン・フォード)とサム

プレッシャーに耐えながらも諦めず、対話を重視する。直接の政治的・社会的な表現は少ないながらも、この映画は、揺れ動く現代における新しいキャプテン・アメリカ像を確かに示している。

『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』

2月14日(金)より全国劇場にて公開中

原題:Captain America: Brave New World
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
監督:ジュリアス・オナー
製作:ケヴィン・ファイギ
出演:アンソニー・マッキー、ダニー・ラミレス、リブ・タイラー、
ジャンカルロ・エスポジート、ハリソン・フォード、平岳大ほか
日本語版声優:溝端淳平、村井國夫、藩めぐみ、森川智之ほか
©2025 MARVEL.
公式サイト:https://marvel.disney.co.jp/movie/captain-america-bnw

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