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バストリオの今野裕一郎にインタビュー クィア性の時代が求める、曖昧な芸術

2025.5.26

#STAGE

『第14回せんがわ劇場演劇コンクール』で4冠。15年のキャリアの中での現在地

—その15年間の変遷の中では、直近の『セザンヌによろしく』はどういう立ち位置に差し掛かってきている作品なのでしょう?

今野:今、色々試している3年間のうちの2年目って感じですかね。皆に裏切られたいと思ってどんどん作品にしていく「開く力」と、その反対の「閉じる力」というのを同時にやってるフェーズにある気がしていて。2024年くらいからそこに突入しているイメージです。両者を分けて考えている時の方が楽だったかもしれない。ある程度気を遣わずにそれぞれが得意分野をガツンとやれる状態じゃないと「開く」ことと「閉じる」ことを同時にはできないし、そうなると長い時間のコミュニケーションが必要。今バストリオにいる人たちはもうずっといる人も多いから色んな時期を知ってるし、だからこそトライできています。

『第14回せんがわ劇場演劇コンクール』にて『セザンヌによろしく!』上演時の写真

—メンバーを知るというのは、バストリオがずっと大事にしてきたことですよね。一緒に散歩するとか、何かをともにすること自体が重要だと。それはこの15年間変わらないですか?

今野:うん、変わってないです。何チームかに分かれて発表し合ったのをそれぞれで観て「いいね!」「分かる」「今日はちょっとうまくいかんかったなぁ」「それ、やってみたいなあ」っていうやり取り。多分、遊びの延長なんですよ。そこに本気も何でもないことも含めて発表に入っているので。

—コレクティブという形態に近いですよね。共通の関心ごとがあって、それぞれが自主的な活動をしていて、今野さんはそれをまとめるだけというか。

今野:自分は、いればいいだけの存在なんですよね。まとめるんですけど、まとめてない時間も含めてまとめる、みたいな。コレクティブっていう言葉は、以前観てくれた方がつけてくれました。自分はそこまでその言葉にはこだわってはいないですけど。

—メンバーと一緒にいてそれぞれを知るというのは、具体的に今野さんはどこを見ているんでしょうか。

今野:なんか、よく分からない集まりなんですよ。でも、とにかく集まる。そうすると何かが起こる。自分は、その人がどういう状態にあるかというのは気にしています。今日は声の質が昨日とは変わったなとか、今日は調子悪いなとか。いつも大きい声を出さないのに、今日はなんで出せたんだろう、とか。自分が大きい声を出してって言ったからなのか、自分で判断したのか、そういう何でもないことを見続けています。見ようとして見るものでもないし、特権的にそこにいさせてもらうから気づくもの。ちょっと感じた事や、ちょっと言われて気になったことを確認し合って、そういうのが積もっていくのが大事だと思います。

—ひとつの作品を作るという意味では共同体でもあるんだけど、もちろん家族とは違うし、職場やスポーツなどのチームとも違うし。

今野:ちょっと説明しにくいですよね。コレクティブのようにそれぞれが得意分野で自立してやってるっていうのとも少し違う気がして。音楽をやってる人が、バストリオだと楽器を頑なに持ってこないとかそういうのもあるので(笑)。……難しいですね。

—とにかく、あらゆる面で固定的ではないですよね。台本も緻密には決めてないし。

今野:そうですね。そのとき考えていることがたくさんメモには残っているけど、それは一回無視して皆と会う。大体2カ月くらい稽古をやるんですけど、最後の1、2週間くらいで流れを記した台本っぽいのができていく感じです。そこからまた変化していきますけど、台本がなくてもできるから。皆流れを知ってるし、その場で繋いでいくので。

—台本っぽいものにしていくとき、その流れや順番というのも皆で作っていくんですか?

今野:なんとなくは俺が決めるんですよ。一応、本を書くのが自分の中の勝負どころではあるので、それを渡すときが一番緊張する。もし、皆がしっくりこなかったら、稽古場でちゃんと皆のことを見てこなかったということだろうから。でも、またハマらなかったら変えていけばいいし。

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