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若い才能が頭角を現す非北米&日本映画
―長内さんがアメリカ映画を中心に挙げてくださっているのに比べ、木津さんはヨーロッパなど非北米圏の映画を多く挙げられていますね。
木津:ビクトル・エリセやペドロ・アルモドバルのような巨匠が素晴らしい作品を出す一方で、新しい世代による優れた作品が近年、現れています。下半期は特に、メキシコの『夏の終わりに願うこと』(リラ・アビレス監督)やスペインの『太陽と桃の歌』(カルラ・シモン監督)など、1980年代生まれの女性監督作品に惹かれました。
木津:彼女たちはパーソナルな作品を撮るんですよね。20世紀の映画の良きタッチを引き継ぎながら、自分の実感や経験を入れてこれまであまり描かれなかった現代的な少女像を描く。だからプロットやテーマの都合で少女を動かさない。映画の「継承と更新」のどちらも行われていて、僕はそこに希望を抱きます。
イタリアの『墓泥棒と失われた女神』(アリーチェ・ロルヴァケル監督)は、テーマこそ違うけれど、20世紀の映画が描いてきた豊かな人間性と重なっているところを感じました。
長内:『墓泥棒と失われた女神』でロルヴァケルはフェリーニに寄っていったなと感じて、いよいよイタリアを代表する映画監督として羽ばたいていく決意みたいなものが伝わってきました。またジョシュ・オコナーがそこに主演として関わっていて、魅力的な座組だと感じます。
―日本映画としては長内さんが『ぼくのお日さま』を挙げられています。
長内:僕は子どもと大人を対比して、人生について描いている作品としてすごく感動しました。ノスタルジーに依存せず、大人に現実を突きつける厳しさがあり、普遍的な作品でもあると感じます。『ナミビアの砂漠』(山中瑶子監督)と並んで盛り上がって、全くスタイルの異なる新しい世代が日本映画の世界で出てきたのを実感しました。ここ最近、これほど日本映画の新鋭が話題になることがあまりなかったので、下半期のおもしろいことの1つでしたね。

木津:『ナミビアの砂漠』のハチャメチャさ、すごく面白かったですね。スタンダードの使い方とか、映画愛みたいなものに行かない新しさとか、今まで見たことがないものでした。それこそ、「伝統的なアメリカ映画」とは違うものを見せてくれているなと感じました。挑発的なところもあるし、すごく新しい作家で活きがいいなと感じますね。
長内:「映画なんて観てどうすんだよ」という河合優実さんのセリフを聞いて「死ぬ!」と興奮しましたね(笑)。
