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奥山由之の初監督『アット・ザ・ベンチ』解説 ジャームッシュやヴェンダースとの共通点

2024.11.20

#MOVIE

クレバーな采配ーー広瀬すず、岡山天音、蓮見翔……豪華キャスト陣・製作陣の起用

本作では他にも、奥山由之監督自身が書いたエピソードや、コントユニット「ダウ90000」の蓮見翔、根本宗子によるエピソードが並び、同じベンチを舞台としつつも、それぞれにジャンルの異なる会話劇が繰り広げられる。また、広瀬すず、岸井ゆきの、岡山天音、荒川良々、今田美桜、森七菜、草彅剛、吉岡里帆、神木隆之介と、新人監督らしからぬ豪華な俳優を集めている。

広瀬すず
仲野太賀

このように、アートフィルム的なアプローチを各エピソードで共通させつつも、写真やCMなどの異業種でのキャリアを活かし、観客へのアピールができる作品づくりを実現させている点が、多くの自主映画作家が活動するなかで奥山監督が「頭抜けている」ところでもあるのだろう。そして、俳優たちのそれぞれの演技に比重を置いている点、自分以外の脚本家に頼っている点など、ともすれば自身の才能を前面に押し出したい第1作において、映画監督としての経験不足を補う選択をしているところがクレバーだといえよう。

専業として映画をコンスタントに手がけられる監督が少なくなっている、現在の日本の映画界では、監督自身で企画を生み出し、売り込むようなプロデュース力がなければ、安定して映画を撮り続けることが難しいという現実がある。その意味において、奥山由之監督の能動的な姿勢と実行力というのは、現在の日本映画の状況にフィットしたものがあるのかもしれない。

岡山天音

そんな奥山由之監督の次の作品は、新海誠監督のアニメーション映画『秒速5センチメートル』(2007年)の実写映画版だ。新海作品がレイヤーを重ねた重厚な絵づくりによる風景描写が多用されていることを考えると、これもまた、奥山監督の写真家としての感性が活かされるものになることは間違いのないところだろう。

しかし、本作における、ヴェンダースやジャームッシュ、小津に例えられるような独自性を、実写映画企画で発揮するということは難しいかもしれない。人生やキャリアがどうなっていくのかは誰にも断言できないが、『アット・ザ・ベンチ』は、その意味で今後、奥山由之監督のキャリアを振り返るなかでも、そして近年の日本映画のなかでも、稀有な一作になるのではないかと考えられるのである。

映画『アット・ザ・ベンチ』

2024年11⽉15⽇(⾦) テアトル新宿、109シネマズ⼆⼦⽟川、テアトル梅⽥ほか全国公開

監督:奥山由之
出演:広瀬すず(第1編・第5編)、仲野太賀(第1編・第5編)、岸井ゆきの(第2編)、岡山天音(第2編)、荒川良々(第2編)、今田美桜(第3編)、森七菜(第3編)、草彅剛(第4編)、吉岡里帆(第4編)、神木隆之介(第4編)
脚本:生方美久(第1編・第5編)、蓮見翔(第2編)、根本宗子(第3編)、奥山由之(第4編)
音楽:安部勇磨
企画・製作:奥山由之 プロデューサー:佐野大 撮影:今村圭佑 録音:佐藤雅之 美術:野田花子
衣裳:伊賀大介 ヘアメイク:小西神士/くどうあき 編集:平井健一/奥山由之 助監督:鈴木雄太
制作担当:神谷諒 カラリスト:小林千乃 オンライン編集:土屋瀬莉 グラフィックデザイン:矢後直規 
配給宣伝協力:池田彩乃 制作・配給:SPOON 

2024年|日本|86分|カラー|ビスタ|5.1ch|英題:AT THE BENCH 
©2024 Yoshiyuki Okuyama/Spoon Inc, All Rights Reserved.

公式サイト https://www.spoon-inc.co.jp/at-the-bench/ 
公式ハッシュタグ▶︎ #アットザベンチ

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