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山本卓卓の新作音楽劇『愛と正義』レポート 独りよがりの「愛」が生んだ悲劇の背景

2025.4.8

#STAGE

岸田國士戯曲賞受賞の劇作家・山本卓卓による新作音楽劇は、ヒーローのヒューマンドラマ

『愛と正義』は範宙遊泳の代表・山本卓卓、そして劇団子供鉅人を経て焚きびびを結成した益山貴司がタッグを組んだ公演だ。

現在とは世界線が異なる2025年。ヒノムラコチ(一色洋平)は、悪を倒して街の正義を守るヒーローを生業としている。そんなコチは未来予知の特殊能力を持つ妻・ヒノムラソチ(山口乃々華)より、中華街で行われる春節の日に、彼のいとこ・エビナウチ(坂口涼太郎)に殺害されることを予言される。それは5日後である。ウチは、生きとし生ける者の悪感情を寄せ集めたアク(坂口涼太郎)に憑依されていた。アクからの司令を受けて行動するウチを止めるべく直談判に赴くソチであったが、彼に囚われてしまう。ヒーローの同僚・イセガメかれ(福原冠)とその恋人・サクラザカかの(入手杏奈)と共にウチ / アクと対峙するコチは、ソチの奪還と間近に迫る死の運命を変えるべく奮闘する。ヒーローものらしく、ブルーやグリーンの戦隊服や、鬼の仮面を装着した悪役の登場が印象的だ。

左からカレ(福原冠)、ウチ(坂口涼太郎)、コチ(一色洋平)撮影:宮川舞子

山本は言葉に独自の意味を持たせて連想を膨らませ、虚構を重ねる詩的な物語を紡いだ。劇空間は、横長に使用した中スタジオを、客席が3方から囲む仕様に設えられている。そこで俳優は飛び跳ね駆け回りつつ演じるから、運動量は相当なものだ。特にコチを演じる一色は、背負ったタンクなどから劇中、何度も給水するほどだ。さらに俳優に加えてダンスカンパニー・BATIKの大江麻美子と岡田玲奈が、家具やイントレの出し入れを行ったり、アンサンブルの役割を果たす。巨大な布を寄せ集めた家具に被せ、その下に潜った俳優たちが浮き沈むことで能力の行使による地殻変動を表現したり、揺らして大波を表現する。シンプルながら効果的な演出は、益山が得意とするところだ。

加えて本作は全12曲を歌う音楽劇である。その際には、天井から吊り下げられた中華街の街灯を思わせる照明が灯る中、賑々しく歌が披露される。これらの要素が一体となって駆け抜ける作品は小劇場演劇のテイストを継いだものであり、かなり込み入っている。

左からカレ(福原冠)、コチ(一色洋平)撮影:宮川舞子

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